こんにちは、スズケーです。
昨年末、日本で亡くなったパキスタン人が、
周囲の人のイスラームの知識不足のために火葬されてしまう…と言うことが起きました。
イスラム教では、火葬は禁忌。
今回火葬されてしまったパキスタン人は、過去に日本人と結婚していたことがあり、
彼の死後、連絡を受けた元妻や周囲の日本の方が、イスラム教徒の葬儀について何も知らないまま、善意で葬儀の手配をし、火葬されてしまったようでした。
善意で行われた事である、それはわかっているものの、ムスリムにとっては大きな問題。
一時期SNS上で、在日パキスタン人の間でかなり注目されたニュースでした。
イスラムの六信の一つに「カダル」という考えがあります。
“カダル”は「運命」と言う意味で、”全ての運命はアッラーによって定められている”というもの。
ならば、このパキスタン人が「死後に火葬される」事も、アッラーによって決められていた、変えられない運命だったのだろうか。アッラーが彼にそういう運命を与えたのは何故?
などと思ったりする。
周囲の人のイスラムに関する知識不足から、日本で亡くなったムスリムが火葬されてしまう事件は今回が初めてではなく、過去にも度々起きていました。
こういった不幸な事故をどうしたらなくしていけるか?
現在、イスラム式の葬送について啓蒙するための活動がパキスタン人有志達によって行われています。
イスラム教徒の埋葬
イスラムは土葬 火葬は禁忌
なぜイスラム教の埋葬方法は土葬で、火葬は禁忌とされているのでしょうか?
その理由は教義にあります。
イスラム教では、キリスト教やユダヤ教などと同様、最後の審判の際に死者が復活する、と考えられています。
世界の終末後に死者が復活し、生前の行いを審判され、天国か地獄行きかを決められるという「最後の審判」が行われる…ということですが、
火葬されてしまうと、魂が戻る肉体がなくなってしまい復活できないため、火葬はタブーということのよう。
なので、イスラムでは、遺体は土葬されます。
遺体はまず、モスクなどで同胞であるムスリムの手によって清められます。
遺体は棺から出され、布に包まれてお墓に埋葬されます(教義上では「24時間以内に埋葬する」そうなのですが、できない場合もある)。
あおむけにし、顔はイスラムの聖地であるメッカの方角へ向くように置かれます。
人間には気持ちの問題と言うのもあり、遺体とはいえ「人を燃やす」「自然にではなく人の手で肉体を消す」事に罪悪感や残酷さを感じるためというのもあるのかもしれない。
同じく死後の復活を信じるキリスト教でも火葬は避けられる事が多いですが、場所や宗派によっては火葬が行われる事もあるようです。
それに対し、イスラム教では
「最後の審判の際に悪人は煉獄(火獄)に落とされ、火に焼かれ続ける」とクルアーンに記載されている事から
「火に焼かれる=処刑・刑罰」みたいな認識を持っている人も多く、
キリスト教よりもより厳格に火葬が忌み嫌われているような印象があります。
イスラムの名を冠した勘違いな過激派テロ組織が、
捕まえた外国人軍人を焼き殺したりする事がありますが、あれは彼らにとって一番残虐な方法での「見せしめの処刑」なわけです。
土葬墓地問題
さて、日本には現在たくさんのイスラム教徒(ムスリム)がいるわけですが…
彼らは当然、死後は土葬を希望しています。
そこで問題になってくるのが埋葬場所。
外国籍者や海外に縁があるムスリムの中には、死後は母国や縁のある国に遺体を送って埋葬してほしいと言う人もいますが、
海外とは無関係の日本人のムスリムは当然日本国内での埋葬を考えますし、
長く暮らした日本で埋葬されたいという外国人ムスリムもたくさんいます。
日本にももともと土葬文化はありましたが、今の日本は火葬が中心。
多分、衛生問題や火葬技術の向上、埋葬場所の問題なんかもあって火葬に移行していったのではないかと。
現在、土葬を受け入れている墓地はあまり多くはないようです。
日本国内で「ムスリムの土葬」を受け入れている場所は
関東、関西、そして北海道など、全部で9カ所あるそうですが、年々増えているムスリムの数に対して足りていないそう。
新たに土葬用の墓地を作りたい、と思っても、その近隣に住む地域住民の方の多くが
土葬墓地付近の水質や土壌の汚染、そしてそこから出る風評被害などを心配し、
土葬墓地建設の許可と、そして理解を得る事が難しく、
なかなか先に進める事が出来ないようです。
「土葬墓地」とかで検索すると、こういったニュースがたくさん出てきます。
土地が狭く、そしてめちゃんこ高い日本。
火葬したお骨を埋葬する墓地を買う事が出来ない人も多くいて、最近では埋葬をしないロッカー式のお墓(納骨堂)も増えてきました。
このまま日本人が土葬に抵抗を感じ、受け入れる事がなければ、
新たに土葬用墓地を作る事が出来なくなることもあるのかもしれない。
そうするとそのうちカプセルホテルみたいな形の、上に積み重ねていくタイプの土葬墓地というのも出来ていったりするのかな…とか思ったりしています。
あとっ。
日本で埋葬するにしても、遺体を母国に送るにしても、現実問題としてお金が必要。
「日本で埋葬したり、母国に遺体を送るための費用を自分で確保しておく事」も大事ですよみなさんっ!
やはりある程度自分でも準備しておくべきと思う。
イスラム式の葬送の啓蒙活動
さて、冒頭で紹介した、
周囲の人の知識不足で誤って火葬されてしまったパキスタン人の件を受け、
現在、パキスタン人の有志が、イスラム式の葬送について啓蒙するため、
プリントやマグネットシールなどの作成・配布活動を行っています。
作成したのは東京にお住まいのパキスタン人・Hafiz mehar shamasさん(@Hafizmeharsham1)。
うちにも送ってもらいました。
「ムスリムのための活動」なので、パキスタン人じゃなくても欲しい方はだれでも勿論OK。ムスリムのお友達に渡したい!という方もどうぞ。
お気軽にお問い合わせを。
マグネットシールに掲載されているQRコードから、以下の内容が書かれたPDFデータ(日本語版・英語版あり)にアクセスする事が出来ます。
それぞれのリンク先アドレスも後述しておきます。
身内やお知り合いの方でムスリム(イスラム教信者)の方がお亡くなりになった時、皆様には3つの大切なことを知ってください。
- ムスリムの方が逝去した場合は 決して火葬を行ってはいけません。
日本ではほとんどの方が火葬されるので、普通の判断と思われています。
日本では、遺体を妻や子供、近親者に引き渡し、その人の意思で埋葬するのが普通です。このような場合、ムスリムが火葬されるとムスリムコミュニティに悲しみと嘆きがもたらされます。
日本において死者に係わる立場にある葬儀社、警察、病院、役場の方が、イスラム教の文化や知識にまだまだ疎い状況です。 - ムスリムの方は亡くなられると 信者の方による儀式後に埋葬します。
お亡くなりになると、地域のモスクに移送し、信者の方が死後の礼拝や洗浄を行います。
埋葬は、日本で行うか、国外移送にて母国でなされるかを判断します。日本での埋葬先は少なく、海外へのお体の移送も手続きが特殊です。葬儀社に頼むと、時間もかかるうえに、高額な請求を求められます。最近では、ムスリムでない葬儀社が、遺族を急かした死者の洗浄サービスを奨め、本来洗浄には費用がかからないのに、高額な請求を求めることもあります。 - もしものときは、慌てて葬儀社を頼らず、安心、安価でサポートする専門家である私達にご相談下さい
- ハフィズ メハル シャマス : イスラム教徒のコミュニティーメンバー
TEL 090-6490-5870 - 株式会社 ディーサポート 代表 真保 健児 (葬送専門会社)
TEL 03-6423-9891
もちろん、ここで紹介されている連絡先に頼らずとも、周囲の方のサポートでうまいこと埋葬まで手配を行えるのであればそれが最良かと思いますが、
身近に頼れる人もいない、どうしていいかわからない、と言う場合は、一度連絡してみてもよいのではないでしょうか。
連絡するだけならタダだよっ!
国際結婚と葬儀・埋葬
相手の宗教や文化に対する最低限の知識
それにしても冒頭で紹介した火葬されてしまったパキスタン人。
彼の死亡連絡を受けた、過去に離婚した日本人の元妻が葬儀の手配をし、火葬してしまったということですが…
結婚の際に、形式上かもしれないけれど恐らくは一度は自分自身もイスラムに入信し、
そしてムスリムのパキスタン人を夫として一緒に生活していたはずなのに、
「イスラム教徒は火葬は御法度」という、
なんというか「最低限の知識」も知らなかったのだろうか、とちょっと驚きました。
亡くなったパキスタン人は、イスラムに関する事を奥さんに一切話さなかったし、
奥さんの方もその時は好きだったはずの夫の宗教について、「表面上だけでも知っておこう」みたいにすら思わなかったのだなぁ、と。
勿論、妻がイスラムに関しては完全に無関心・ノータッチでも、その夫婦が問題ないのであればいいんでですけど。
夫婦関係って色々ですねぇ。
ただ、人間関係って、「相手がなぜこう考えるのか」という事を片鱗でも知る事が出来れば大分ラクになるし、自分も対応がしやすくなる。
相手がパキスタン人ムスリムの場合、それを知るにはイスラムについて知る事も不可欠になってくる、と私は思っています。
宗教とかって、知るととっても興味深いし、別に知ったからと言って実践しないといけないというわけでもないので、
ちらっとでも「イスラムってどんな宗教かな」って思ったら、
本などを手にとってみるのもオススメですよ!
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パキスタン人と結婚している非ムスリムの私の死後は?
以前から度々書いていますが、私はムスリムのパキスタン人と結婚していますが、
私自身はムスリムではありません。
イスラムに入信していません。
旦那も旦那の家族も、そしてパキスタンの友人らも、それに対して何も言わないし、
我が家はこれでなんの問題もありません。
ムスリムではないからと言って、私お普段の生活があまりにもイスラームからかけ離れている、と言うわけでもないですし
(というか、誰でも普通に正直に粛々と生活していれば、イスラームはじめ大抵の宗教の理念的な事には添うのではないかと思う)。
そんな私が唯一どうしようかなと悩ましいのは、死んだらどうするの?ってこと。
今の日本では一般的に死ぬと火葬されますが、イスラームでは火葬は御法度、土葬となります。
ぶっちゃけ私は「死んだ後の事はどうでもいい」。
私はインドかぶれなので、なんならガンジス川に遺灰を撒いてもらうとかいいよね、などと思ったりもする。
ただ、私自身はどうでもよくても、私が死んだ後、周囲が困るだろうから
ある程度考えをまとめておかないと、と思うのですが。
パキスタン人の旦那はムスリムなので当然土葬。
できれば遺体をパキスタンに移送して埋葬してほしいっぽい。
ムスリムではない私。
日本人として火葬するのか、パキスタン人の旦那の近くに土葬するのか。
うちは子供もいないし、墓守もいない。
私の親も別に特別宗教や死後の埋葬方法にこだわりがあるわけでなし、
日本でもパキスタンでもいいので、旦那と一緒に並べて埋葬してもらうというのが
一番無難で妥当なのかもしれません。
どうなるにせよとりあえずは、我が家は二人分の葬送費用を確保しておかねばですねっ。
皆様も、死後の備えを安泰に!
貯金が出来ないって場合は、ファイナンシャルプランナーさんに相談して、家計を見直すのもオススメですよっ。
お読みいただきありがとうございました!
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