こんにちは、スズケーです。
イスラーム関連の本は色々あって、イスラームについて普通に一つの宗教として興味のある私は、昔から結構いろんな本を読んでいます。
イスラームについての紹介の本、勉強の本は勿論、ルポタージュ的な本も。
ルポタージュ的な本の中で、私が結構好きな本があるので紹介しようと思います。
佐藤 兼永さん著「日本の中でイスラム教を信じる」。
日本に住んで、学んだり働いたりしながら生きる、外国人・日本人のムスリムにスポットを当て、紹介をしている本です。
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日本の中でイスラム教を信じる
著者 佐藤兼永さん
アメリカ・ミネソタ大学ジャーナリズム学科卒のフォトジャーナリストさん。
2001年5月に、富山県で起きたクルアーンが破り捨てられるという事件と、その後に起きた9.11をきっかけに「日本に住むイスラム教徒」の存在に目を向けるようになったそう。
自分がイスラム教やムスリムについて何も知らないこと、
そして、「日本に住むイスラム教徒」の彼らが事件やテロに関して何か意見を述べてもどこかリアリティを感じられないのは、
自分が彼らについて何も知らず、彼らの生活について想像することすら出来ないからなのではないか、と思い、取材を始められたそう。
出来るだけ時間をかけ、多くのムスリムに話を聞くことにこだわって取材をされたそうで、そのこだわりの結果がこの本にギュッと凝縮されています。
2018年には「マイノリティとして生きるムスリムとアイデンティティ」という写真展を開催されるなど、この本を出されたあとも、日本の中のマイノリティであるムスリムについて、引き続き取材を続けられているみたいです。
内容紹介
この本が出た2015年には、
フランスの新聞シャルリー・エブドにイスラム教の預言者ムハンマドの風刺画が掲載され、それに関するデモが行われたり襲撃事件があったり、
ISIL(イスラム国を名乗る過激派組織。ダーイシュ)による日本人の誘拐・殺害事件など、
イスラームという宗教に関して「過激で物騒」という一方的な印象を与えかねない事件が相次ぎました。
この本は、10年以上の取材を元に、日本に住み・生活する普通のイスラム教徒の普段の姿を描いたルポタージュで、
前述した事件に対する、日本に住む一般的なムスリム達の意見や行動についても紹介されています。
入信動機、日頃の習慣、会社の中でのイスラームの実践、結婚問題などを、
複数の日本人・外国人ムスリムや、彼らに関わる人々にインタビューし、
複数の事例と多角的な視点から丁寧に「日本に住むムスリムの姿」を浮かび上がらせています。
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- 序 章 東京新聞への抗議でも、その舞台裏で
- 第一章 礼拝、断食、スカーフ……。イスラム教徒の日常
- 第二章 断食中に大事な接待、そのときどうする?
- 第三章 イスラム教徒は冥福を祈れない
- 第四章 校長室で礼拝を
- 第五章 「いいかげん」なイスラム教の実践
- 第六章 イスラム教は「変」? 本当の一夫多妻制
- 第七章 被災者支援というジハード
- 第八章 イスラム教への「理解」は必要なのか?
- 終 章 日本社会とイスラム教の距離
著者の佐藤兼永さんは、イスラームやムスリムに対する知識や認識が少ない状態からインタビューを始められています。
「イスラームについて特に意見もなければほとんど知識がない大勢の日本人」のインタビュアー。
それはある意味、この本を読む読者の多くと同じであり、イスラームやムスリムについてまっさらな状態の日本人が読むには最適だと思います。
私はこの本を2〜3回読み返しをしているんですが、
1つの事柄・事件について複数の人にインタビューし、一方からだけでなく、様々な視点からの意見を知ることが出来るのもとても気に入っています。
実際に自分がムスリムという方が書いた本や学者さんの本は、ある程度結論が見えている…と言うか、
「こういう事を調べて書こう」というテーマだけでなく、「こういう風にまとめたい」というその答えが、全て読む前から透けて見える場合が多い。
過去のブログで書きましたが、ある事柄に対する1つの側面のみの紹介で終わってしまう本や記事って、物足りなくてあまり好きではないのです。
それに対してこの本は、ある事柄に対し、対立する二つの意見を持つ人々にインタビューしたり、ムスリムだけでなく彼らに関わる非ムスリムにもインタビューしたりと、
とにかく、イスラームやムスリムを知るために、
色んな方向から取材を行って、それを著者の変な思い込みを交えすぎずにサラッとまとめて紹介しています。
著者の意見やまとめがグイグイ入り込んでいる論文とかとは違うので、ただ読んで「ふーん、そういうこと」で終わるんではなく、
ああ、私はこの人と同じように考えていたけれど、そうでない人はこんな風に考えていたんだ、とか、
対立する二つの意見を読んで私はどう思うのかとか、自分の頭で考える余韻を与えてくれる。
本を読んでおしまいではなく「その先」を与えてくれる。
だから何度読んでも、”その時の私”の状況や知識が違うから、同じ本でも新しい気づきがある。
私はこういう本大好きです。
イスラームに対して知識がない日本人は
「イスラム教って日本人と色々違うんでしょ?」とか「お祈りとか食事とか色々と大変そう」って思ってる人も多いのではと思います。
もちろん、何かしら日本社会の中でムスリムということで苦労をしている人もいるけれど、そうでない人もいっぱいいるよ、っていう一端を、本書を読むことで知ることができます。
私達は、どんな事柄についてだって、よく知らないのに勝手な思い込みを持っていたりするかもしれません。
それは、自分自身が何かを見たり、学んだり、経験するなどして、「知る」ことで徐々に認識を改めていくしかない、と思っています。
この本「日本の中でイスラム教を信じる」は、押し付けがましくなく、イスラームやムスリムについて「知る」ことの手助けをしてくれます。
著者がもともとイスラームやムスリムについてよく知らず、そして彼らに接点のない人間だったからこそできた、
変な偏りのない多種多様、色んな立場の様々な意見を持つ人々へのインタビューを続ける中で、
著者がイスラームやムスリムについて知り、自分なりの意見を持つようになったのであろう過程を、読者の私達も疑似体験するように、自分なりに考えながら読むことが出来ますよ!
ピンポイントに何かに対して詳しく、ではなく、
広く俯瞰的な視点で見ているからこそ、変な思い込みとかなく、
「ああ、ムスリムっていってもいろんな人がいるね。そういうのは、普通の日本人と何ら変わらないね」
っていうのを、スルッと理解できそうな気がします。
100%理解しなくても
今回再読して、一番思ったことはこれ。
ムスリムって言ったって、同じ人間。
ムスリム同士で対立することだってあるし、
人によって意見も考えも違うし、理解できることも理解できないこともある。
難しく考えすぎることはないんだし、100%理解しなくちゃいけないなんて頑張りすぎる必要もない。
ただ、「知りたいと思い続けること」、
こういう気持は、ずっと持っていきたいな、と思う。
相手を知りたいと思わなければ、仲良くなんてなれませんもんね。
相手に興味を持つこと、それが交流の第一歩。
日本は多くの日本人が思っている以上に柔軟に、そして当たり前のように、イスラームと、そしてムスリムと共生しているし、
私達はほんのちょっと視点を変えるだけで簡単に彼らと打ち解けることが出来るんだな、というのが感じられる本です。
イスラームについての知識が学べるとか、そういう本ではないけれど、
日本で暮らすムスリムについて興味を持っていたり、彼らについて知りたいなって思うのであれば、
読んでみて損はない本だと思います!
ぜひどうぞ。
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お読みいただきありがとうございました!
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