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カシミール テロと暴力と、インドとパキスタン

カシミール テロと暴力と
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こんにちは、スズケーです。

インドとパキスタンが領有権を争うカシミール。

現在インド側が支配しているジャンムー・カシミール州で2019年2月14日、
治安部隊のバスを狙った自爆テロがあり、44人が死亡しました。

パキスタン側は否定しているものの、インドはパキスタンの関与を指摘しています。

現在インドは総選挙を控えていることもあり、
モディ政権は国民からの批判を避けるために強硬姿勢を取っていて、両国の緊張が高まりつつあります。

 

カシミールでのテロと、インドの対応

14日の午後、インド軍の治安部隊を乗せたバスの車列に爆弾を積んだ乗用車が突っ込みました。

インド軍の治安部隊の死者44人。
過去20年間にカシミールで起きたテロ事件で最大の数だそうです。

犯行に関して、パキスタンを拠点にカシミール地方の分離・独立を求めるイスラム過激派組織「ジェイシ・ムハンマド」が声明を出しています。
ジェイシ・ムハンマドはインドが長年「パキスタンの情報機関が組織を支援している」と批判してきた組織です。

インドは15日に閣僚会議を開催し「テロリストは高い代償を払わなければならない」「パキスタンを完全に孤立させるためにあらゆる外交的施策を採る」と宣言。
パキスタン外務省は関与を否定し「調査も行わずに事件とパキスタンを結びつけようとする姿勢は受け入れられない」とコメントしています。

ただ、総選挙を控えたインドの現政権の姿勢は強固で、パキスタンに付与していた最恵国待遇を取り消し、パキスタンからの輸入品への関税を200%に引き上げました。
この関税の引き上げは、実質、パキスタンからの輸入をほぼ禁止することを意味します。

インド国内の反応も厳しく、インドのメディアでは軍事攻撃の可能性もあるのではないか、という意見も出ています。

18日には捜索活動を展開していたインド軍の威嚇発砲に武装勢力が撃ち返し、激しい銃撃戦に突入。兵士4人、警察官1人、武装勢力メンバー3人、民間人1人の合計9人が死亡しています。

カシミールの湖

文化交流にも影響

今回のテロを受けて、全インドシネワーカー協会(All India Cine Workers Association )がパキスタンの俳優や映画業界で活動するアーティストの全面禁止を発表しました。
また、映画会社などにインド映画をパキスタンで上映しないよう要請しています。

テロを批判するのは当然だし、必要だけれど、
芸術にはテロも国も国同士のしがらみも関係ないものであるべきと思うのですけど。

むしろこんな時だからこそ、市民同士の交流やつながりは断つべきではない、と思うのは、私が甘いのでしょうか。理想論を掲げているだけなんでしょうか。
自分の国のことではないからそう思うだけ?

以前紹介したインドの映画「FILMISTAAN」で、映画を心から愛する主人公サニーの台詞に
「もしパーテーションがなかったら」「有名な歌手達だって元々は同じ大地の出身なんだ」という台詞がありましたが、
今のインド映画業界でそう考える人はいないのか、例えそう考えていても政治的に断念せざるを得ないのか。

filmistaan
映画を通じたインド人とパキスタン人の交流「FILMISTAAN」インド人とパキスタン人、国や宗教を越えた人々の交流を描く「FILMISTAAN」の紹介とあらすじ、感想。印パの交流映画としては2019年日本公開の「バジュランギおじさんと小さな迷子」もいいですがこちらもイチ押し。...

カシミール紛争による被害者が増加

2018年はインドでカシミール紛争による被害者が増加した年でした。

民間人、治安部隊、過激派含め500人以上が死亡しました。
被害者の多くは民間人です。

この世の天国と謳われるカシミール。
しかしこの地に生まれたことで苦しんでいる人々も大勢います。

カシミールは私がインドで一番大好きな場所です。

長いこと滞在していると、前日まで普通だった建物が、軍のアタックを受けて翌日真っ黒焦げになっているのを見かけることもあります。
私がカシミール滞在中にいつもお世話になっている友人らのお店の前で爆弾テロがあり、お店がめちゃめちゃになったこともあります(幸いその時間、みんな礼拝に出かけていたのでケガ人はいませんでした)。

カシミールでは人々の日常の中に当たり前のように紛争があり、死があります。
もうずっと前からです。

インド政府やインド軍の横暴な振る舞いや圧政に、不満を持っている住民も多いです。
インド政府や軍は「過激派やテロリストを掃討する」という大義名分を掲げ、住民を無視して作戦を行い、何の躊躇もなく一般市民を巻き込み、そして殺しています。

2018年にカシミール紛争で亡くなった500名以上の人々は、
過激派やテロリストによる被害者だけでなく、インド政府やインド軍の被害者もいます。
インドの政府やメディアが、それを大々的に報道することはあまりまりません。

インドもパキスタンも、政府も軍も過激派も、
この美しい場所で、暴力を振るい、殺し合いをするのは愚かなことだとなぜ思わないのか不思議でなりません。
そしてなぜ、一般市民を巻き込めるのかも。
みんなただ、静かに、平和に暮らしたいだけなのに。

カシミールの住民は、彼らにとって無益な争いにずっと前からただ巻き込まれている。

昨年末に「来年はカシミールの人たちが穏やかに過ごせますように。私もまた行けますように。」と願っていたばかりですが、
その願い空しく、こんなことが起きてしまったのが悲しい。

地上の天国であるはずの場所で

Agar Jahaan Mein Kahin Jannat Hai To
Woh Yahaan Hai, Yahaan Hai, Yahaan Hai

もしこの地上に天国があるとすれば、
それはここだ、ここだ、ここだ

ムガル帝国第4代皇帝ジャハンギールがカシミールを謳った詩です。彼はカシミールを天国と言ったと伝えられていますが、
カシミールが天国ならば、こんなにも理不尽に人は死なない。

 

インドとパキスタンの対立はいつ終わるのか。
両国政府が争いを収めるつもりはあるのか。

攻撃を受けたからといって武力や国交で制裁を加えていたら、それに対する不満が募って、また新たな火種を生むだけです。

テロリストや武装勢力と、政府は、政治は別問題。
そういうことはできないんだろうか。

 

少しでも早く、カシミールが美しく穏やかな場所に戻りますように。
ジャハンギール帝が天国と讃えた頃のような場所にね。

カシミール問題については、こちらもどうぞ。

カシミール問題 終わらない争い
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スズケー
フンザ出身のパキスタン人と国際結婚しています。 デザイナーとライターとアーティスト、時々通訳をしつつ、 投資もやってます。 お金稼いでパキスタンと日本とインドと、好きに行ったり来たりしたい。
 
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POSTED COMMENT

  1. ひろ より:

    インドのカシミール地方も本当にきれいだね。パキスタンのカシミール地方もきれいだけどね、いきたかったな~。一般人にとってテロは100害あって一利なし。止めてもらいたい。テロを起こすよりアイス食ってたほうがいいのにね。テロリストは誰も死なない爆弾を開発してお菓子でも爆発させたらいいんだ(笑)。

    • スズケー より:

      ひろさん

      インドのカシミールは、工芸品も素晴らしいし、ご飯もうまいし、もう最高だよ…

      テロをすることでしか自分たちの主張を世界に伝えられない、何も変えられないと思っているのかもしれないけれど、
      今はインターネットで自分たちから発信していくこと、訴えていくことだってできるんだから、
      そういう平和的な方法での抗議をすることはできないのだろうか、彼らの選択肢にはないのだろうかって思うよ。

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