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アーシア・ビビの事件 冒涜罪に問われたパキスタン人キリスト教徒

冒涜罪に問われたアーシア・ビビ
記事内に商品プロモーションを含む場合があります

こんにちは、スズケーです。

フンザ宛に大事な荷物をEMSで発送しました。
10月29日(月)にセントレアからパキスタンにむけて発送されたEMSのオンラインステータスが、
11月1日(木)になっても「パキスタンに到着した」状態になりません…

通常なら、翌日深夜〜翌々日朝にかけて、
パキスタンに到着したよ、というステータスになるんですが。

はて、何か問題が?と思ってニュースを見ていたら、
どうやら、預言者ムハンマドに対する冒涜罪に問われていたキリスト教徒の
アーシア・ビビの最高裁の逆転無罪判決のせいでパキスタン国内が大混乱。

インターネットがつながりにくくなったり、幹線道路が封鎖されたりしてるようなので
恐らくその関係で、システムがうまく機能してないんでしょう…

もうほんと、何してんのパキスタン…

 

パキスタン人キリスト教徒・アーシア・ビビの事件概要

2009年から預言者ムハンマドに対する冒涜罪で拘束されていたキリスト教徒・アーシア・ビビの
自伝による事件の経緯は以下の通り。

アーシア・ビビの事件概要

アーシア・ビビは、果樹園で働くキリスト教徒のパキスタン人女性。
ある暑い日に喉が乾いたため、井戸から水を汲み、共用のカップから水を飲んだ。
それを見たイスラム教徒の女性達は
「この水は飲むことができない。お前のせいで水が穢れた」
「汚らわしいキリスト教徒」と
アーシア・ビビを罵り、イスラムに改宗するよう迫った。

アーシア・ビビは
「私は改宗するつもりはない。
私はキリスト教と、全ての人の罪のために十字架にかけられて死んだイエス・キリストを信じている。
ムハンマドは人々を救うために何をしたの?」と言ったところ、
イスラム教徒の女性達からツバを吐きかけられ、押し倒された。

そして数日後、アーシア・ビビは預言者ムハンマドに対する冒涜罪で警察に拘束され、その後、死刑を宣告されていた。

彼女の裁判を巡ってパキスタン国内でも世論が真っ二つに別れ、死刑執行を望む声も激しい中、
2018年10月31日、パキスタン最高裁は、アーシア・ビビに対して無罪の判決を下した。

 

流用元の記事(英語):Pakistanis rally to demand death for Christian woman facing execution for blasphemy

関連記事:キリスト教女性が無罪に、冒とく罪で8年前に死刑判決 パキスタン

補足。

パキスタンには、イスラームに関するものを冒涜から守るため、1980年代に導入された「宗教冒涜罪」がある。
預言者ムハンマドの名を汚す者は、死刑または終身刑に処せられると言うもの。

実際には冒涜行為を働いていなくても、虚偽の告発によって個人的な恨みを晴らすために利用されるケースもあり、
有罪とならなくても、疑いにかけられるだけで、報復攻撃を受けることも少なくない。

冒涜罪に問われたアーシア・ビビは、5人の子供を育てる貧しいけれど普通の女性だった。
彼女が最初に告発された時、村人達が彼女の家に押し寄せ、
ビビさん一家に激しい暴行を加え、ビビさんの服を引きちぎったりしながら、村の中心まで引きずっていったと言う。

パキスタン中のイスラム教徒の多くがアーシア・ビビの死刑を待ち望む中、
当時のパンジャーブ州の知事、サルマン・タシールは彼女の人権を主張し、
当時のザルダリ大統領に対して、彼女を釈放すべきだと訴え、
問答無用で死刑が適用される不敬罪に関しても「冒涜罪は悪法だ」と述べ、この規定の緩和を唱えていた。

これを受け、モスクのイマーム達はサルマン・タシールを激しく非難。
その数日後サルマン・タシールは、
「アッラーのために知事を殺さなければならないと思った」という彼自身の警護官に射殺された。

SNS上では、サルマン・タシールを殺害した警護官に対する称賛する書き込みが殺到。
数年後、その警護官が処刑された際には彼を”殉教者”と讃える群衆もいた。

サルマン・タシールが殺害された2ヶ月後には、
サルマン・タシールと共に、冒涜罪がキリスト教徒など少数派の迫害に悪用される可能性を指摘していたシャバズ・バッティ少数民族相(少数民族問題を担当する閣僚)が、複数の男に銃撃されて死亡した。
シャバズ・バッティ少数民族相はパキスタン政府パキスタン初にして唯一のキリスト教徒大臣だった。

政教分離ではない国で

「お前のせいで水が穢れた」「汚いキリスト教徒」と最初に罵ったムスリムの女性は何のお咎めもなく、
「ムハンマドは人々を救うために何をしたの?」と問い返したクリスチャンの女性は
パキスタン中から死を持って償えと言われている。

スズケー
スズケー
解せぬ。
政教分離でないとこういうことも起こるのか。

というのが、数年前、この事件を最初に知った時の感想。

例えば私は日本人でムスリムではないので、
アーシア・ビビに「あなたのせいで水が穢れた」と言った人々は、私が水を飲んでも当然そのように罵るのだろうか?これまでそういうことを言う人に会ったことないけど…
と思っていたのだけれど、
昨晩、知り合いの方(日本人ムスリム)に「入信前に同じ水を飲むのが嫌だったって言われたことがある」というお話を聞いて、
そういう人ホントにいるんだ!って驚きました。

馬鹿らしい。それ、小中学生のイジメと同じだよ。
いい年した大人が何やってんだろう。

だけどそこに「宗教」が絡むだけで、政治にも影響を与える世論問題になり、
国中で、一人の女性の命を要求するほどの「度を超したイジメ」が始まる。

最初に絡んだ女性たちは宗教云々以前に、アーシア・ビビの人としての存在そのものを否定するようなことを言ったのに、そこが問題にならないのがパキスタンという国。

これが冒涜罪で、
これが政教分離ではない国の法律で、
これがパキスタン

アーシア・ビビの無罪判決に揺れるパキスタン

冒涜罪そのものや、8年以上収監されているアーシア・ビビへの人道的観点から国際的にも非難の声が上がっていたこの事件に対して
パキスタン最高裁は、2018年10月31日、無罪の判決を下しました。

最高裁は判決で、
「検察は本件に関して、十分な容疑があると証明することを全面的に失敗した」として、証拠が不十分な上、適正な手続きが取られていなかったことを指摘。
問題とされたビビさんの発言についても、彼女を殺すと脅迫する人々の前で出たものだと述べ、
ムハンマドの言語録「ハディース」に書かれている、非イスラム教徒に対して親切に接するよう勧める言葉を引用して終わりました。

私の感想は「良かった」。

アーシア・ビビの命が救われたのも良かった。
パキスタンの司法が、公正な判決を下したのも良かった。

前述した通り、アーシア・ビビの人としての存在を否定するような暴言を吐いた女性たちは裁かれず、
政教分離ではない国で”冒涜罪”が重要視されるがゆえに、アーシア・ビビのみが一方的に裁かれ、死を望まれるのはおかしい。ふざけんなと思う。

けれどパキスタン国内では、この判決に大きな不満を持つ人々も少なくなく、
そういった保守派の人々が、
路上で物を燃やしたり、主要道路を封鎖したりしているようです。
インターネットもつながりにくくなってるみたい。

お陰で私がフンザ宛に送ったEMSも、現在のところ行方知れずです。

スズケー
スズケー
いつも思うんだけど、物を燃やしたり、道路封鎖するのって誰得!?
それ、なんか意味あるの?

まぁ、不満を表現して訴える方法の一つなのだろうけれど、
それ結局、困るの同じパキスタン国民だから。
馬鹿じゃないの。

晴れて無罪となったアーシア・ビビですが、
このままパキスタンにいたら結局いつか殺されるんだろう、と思います。
殺されなくなって、きっとパキスタンには住めない。

無罪の判決を下した裁判官だって殺されるかもしれない。

誰だって自分の命が大事だもん、
パキスタン国内で、表立って彼女を受け入れて守ってくれる人や場所は、きっともうないのだろうな、と思います。

殺されたサルマン・タシール知事や、シャバズ・バッティ少数民族相は、
人としての理を知る、本当に勇気ある強い人たちだった。

画像引用元:https://news.sky.com

アーシア・ビビとその家族は、国外に亡命するしかないだろうと思うし、
実際、彼女が釈放された後の亡命先として、数カ国が亡命の受け入れを表明しているそうです。

不満があれば暴力を振るう、群衆が暴徒化する、宗教の名の下に人の命を奪う、それが賞賛される。

パキスタンはいつまでもそういう国のままで良いのだろうか、と思う。

スズケー
スズケー
先日の渋谷のハロウィン騒動とかを見ると、
日本もこういう低モラルの国に退化しつつあるのかなと心配になるので、
パキスタンのことをどうこう言えないのかもしれないけれど

早く落ち着きを取り戻すように

今回のパキスタン最高裁の逆転無罪判決は、
世界的な世論の流れを受けてのことかもしれないけれど、
パキスタンの裁判所が、これをきっかけに宗教的冒涜に対し、公正で穏健な立場を取るような流れとなっていくことや、
冒涜罪のそのものが見直されることを期待したいなと思います。

これ以上、誤解や、悪意を持った告発で、誤って裁かれる人が増えないように。

そしてそれをパキスタンの人々が理解できるように。

宗教も大切かもしれないけれど、
人としての尊厳だって、それと同じくらい大事だと思うよ。

 

とりあえず、早くパキスタン国内が落ち着いてくれると良いなと思います。

じゃないと、私がフンザ宛に送ったEMSがさ…

暴徒達が、抗議運動に参加しない人を襲ったりもしてるようなので、
荷物つんだ郵便局の車が襲われて、荷物紛失とかにならないことを祈ります。
ホントに…

 

補足にこちらもどうぞ。
今回の事件や暴動行為に対する、
パキスタン首相イムラン・カーンの声明の要約も紹介しています。

イスラムのせいなのか
イスラームのせいなのか アーシア・ビビの事件を受けてイスラムと、アーシア・ビビの逆転無罪判決に対するパキスタン国内の抗議運動や、一部の暴動に関しての関係の考察。パキスタン首相・イムラン・カーンに期待する事など。...
2019年1月31日追記:亡命にむけて前進

アーシア・ビビの無罪判決に対する異議申し立てが出ていましたが、2019年1月28日に棄却され、アーシア・ビビはようやく自由の身となりました。
詳しくはこちらで。

パキスタン人キリスト教徒のアーシア・ビビの再審請求棄却
パキスタン人キリスト教徒のアーシア・ビビの再審請求棄却、亡命へむけて前進預言者ムハンマドに対する冒涜罪で拘束されていたパキスタン人キリスト教徒、アーシア・ビビの2018年に出た無罪判決に対する異議申し立てが棄却。ようやく自由の身に。...

 

 

お読みいただきありがとうございました!
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ABOUT ME
スズケー
フンザ出身のパキスタン人と国際結婚しています。 デザイナーとライターとアーティスト、時々通訳をしつつ、 投資もやってます。 お金稼いでパキスタンと日本とインドと、好きに行ったり来たりしたい。
 
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POSTED COMMENT

  1. あつこ より:

    ブログありがとうございます。勉強になりました。
    夫が「弟に2日間電話がつながらない!」とパニクっていたので、これこれの事件があるから電話が帰省されてるんだと思うよ~と伝えたら、自分よりも私の方が今日のパキスタン情勢に詳しかったことでショックを受けていました。笑
    パキスタンが法治国家として国際社会に認められるためにも、彼女の無罪判決は本当に良かったし、必要なことだったと思います。が、国民がこれじゃねえ。。。なんだか、国民の意識は、21世紀にはほど遠い感じがしてしまいます。教育の問題なんでしょうかねえ。
    何にせよ、本当に物騒なことで、早く平和が戻って欲しい!EMSも無事届くといいですね。

    • スズケー より:

      >あつこさん
      パキスタン国外でも普通にニュースになっていると思っていたので、パキスタンの方が知らないというのがちょっと驚きです。
      イギリスではニュースになってないのでしょうか?

      何かあるたびに国民がこうなってしまうのは、明らかに、子供の育て方や教育のせいだと思います。
      パキスタンで子供に対する接し方を見ていると
      「こういう風だから我慢できない大人になるんだろうな」って思う事多いです。

  2. amisha より:

    それがパキスタンという国、イスラム教という事でしょうね。だからイスラム教=怖い宗教
    と多くの日本人が思っている。

    改宗するように言われるって、他の宗教を認めないという事?強制するんですね。

    私は改宗しないとイスラム教の夫との結婚はできないと言われ、マスジドに行き話を聞き、
    コーランを3行読んだら.今日からムスリムだよと
    言われました。3行??え? しかも意味がわからない言葉。
    ま、それでニカーが出来て結婚できるなら仕方ないかと思いましたが、私は仏教徒です。

    夫はパキスタンに住んでた5年間、モスクで祈るように強制されたらしいですが、断り続けました。
    国籍だけパキスタンでアメリカ人、日本人感覚です。よく殺されなかったなと今思います。

    私が初めてパキスタンに行った時もデモで主幹道路が閉鎖され、病気の子供が乗った救急車が通行できず亡くなったとオンラインニュースで見ました。
    道路上ではタイヤなんかが燃やされてました。
    意味がわからない。やる事ないから、皆んなが騒いでるから一緒に騒ぐ感じ?
    大変迷惑!日にちがズレてたら空港に行けなかった。
    今回の事件を見て、イスラム教は過激な宗教だと
    いう事が改めてわかりました。

    イスラム教は平和な宗教だとマスジドの人は言っていましたが、平和な宗教がすぐに人の命を奪うでしょうか。サウジアラビアの事件もそうですが、恐怖でしかない。国によってイスラム教のあり方捉え方が違う?

    • スズケー より:

      >amishaさん

      クルアーンには「宗教には強制があってはならない」ということが書かれています。
      イスラームの信仰は強制する物ではないですし、他の宗教を認めないという事もありません。
      私自身もそうですが、現に、ムスリムと非ムスリムの結婚例は普通にあります。
      インドのように複数の宗教が複雑に生活に絡む国ではわりといますよ。

      結局、宗教はただのツールでしかないです。
      それを使う人・受ける人によって形は変わる。
      今回の件で暴動を煽動している人・参加している人は、その人のイスラームの解釈の仕方が歪んでしまっている、それだけのことです。

      今回の問題は、それを理解しないパキスタン人の、人としての素質の問題です。
      カショギ記者の件も、それをするよう指示した人間と行った人間が、人として倫理が欠落しているだけであり、
      いずれもイスラーム云々の問題、イスラームのせいではないと思います。

      こういう事件を受けて「イスラームは過激な宗教」とひとくくりにするのもどうかと思います。

  3. amisha より:

    >スズケーさん
    ムスリムと非ムスリムの結婚ってクリスチャン
    だったら出来たのかな?
    私は仏教徒なので、改宗しないと100%不可能と
    言われましたが。

    • スズケー より:

      >amishaさん
      ムスリム男性は、キリスト教徒やユダヤ教徒との女性との結婚はイスラーム法でも認められています。

      例えば、二カーができなくとも、コートマリッジ、
      裁判所や役所で手続きを行うのみの結婚は可能です。
      インドだと、ヒンドゥーとムスリムの結婚も普通にありますが、おそらくはコートマリッジで法的な手続きをしているのかと思います。

      私自身はクリスチャンでも仏教徒でもありませんが、二カーをしています。
      結局、アッラーの名の下とはいえ、行うのは人ですから、
      ムスリムと非ムスリムの二カーを許可するかどうかは、それに関わる全ての人の判断によるかと思います。

      ちなみに、
      私がムスリムでないのに二カーをした事に関しては、
      うるさい人らは「それは有効ではない」「ありえない」と言うかもしれませんが、
      二カーをしたイマームは認めたからこそ式を執り行ったんでしょうし、
      パキスタンのお役所で公正証書化したニカナマもありますし。
      外野が何を言おうが、関係のない事です。

      ただやっぱり、こういうイレギュラーケースでの結婚は
      うるさく言う人もいますので、
      それに対して毅然としていられるだけの意志と、
      ある程度強いメンタルがないと大変だとは思います。

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