こんにちは、スズケーです。
EU理事会が5月21日、海洋プラスチック問題の原因となっている10大・使い捨てプラスチックの使用を禁止する「使い捨てプラスチック指令案」を正式に可決しました。
ストロー、マドラー、食器(ナイフ・フォーク・スプーン・皿)、綿棒、風船の柄や、生分解性プラスチックの中でも分解性が弱い「酸化型生分解性プラスチック」の使用が全面的に禁止されるそうです。
2021年までに施行予定。
実はパキスタンのフンザでも、2019年4月から、商店などでの使い捨てのビニール袋の使用が禁止されています。
目次
フンザがアジアで初のビニール袋禁止地区に
パキスタン政府は、気候変動による地域への影響を緩和するために、イスラマバードと4つの州でビニールのレジ袋(プラスチックバッグ)の使用を禁止することを発表。
2019年4月22日には、フンザのアルティットでレジ袋の使用禁止の発足式も開催され、フンザはアジア初のレジ袋の使用禁止地区となりました。
1万個の布袋がフンザの人々の間に配布され、ビニールのレジ袋の使用の停止を訴えています。
3ヶ月後には、ギルギット・バルティスタン州の他の地域でも、ビニールのレジ袋使用が禁止されるようです。
こちらの記事でも書いていますが、ここ最近、フンザでは観光客の増加による環境汚染の被害が深刻になってきていました。
実際には、観光客だけでなく、地元の人々もポイ捨てしたりしているんですが。
今回のプラスチックバッグ使用禁止は、パキスタン随一の観光地となり得るであろうフンザの景観を守ろう、という意図も大きいのだと思います。
アルティットで開催されたレジ袋の使用禁止の発足式
アルティットで開催された発足式、たまたま私も参加していました。
パキスタンあるあるですが、開催予定時間になってもなかなか式典が始まらず…
どうも、式典に参加する政治家さんの到着が遅れているのが理由のようでした。
フンザのイベントは大体全てこのパターンですが、
地元の代表の方の挨拶があり、フンザの踊りがあり、政治家の紹介と挨拶・スピーチがあり…
最後に布バッグ=エコバッグが地元の代表の方々に手渡されました。
式典で言われていた今回のビニール袋使用禁止に関する内容やその意図は以下の通り。
私が聞いて、ザックリメモしていたことなのでちょっと間違いもあるかもしれませんが…
レジ袋使用禁止法発足式典の内容
我々は村で買い物をした時に、これまでほとんどの場合、購入したものをビニール袋に入れて持ち帰っていた。
ビニール袋はただ、店から自宅に持ち帰るまでの間に使われるもので、すぐに捨てられ、ゴミになる。酷い場合は道に捨てられ、放置される。
我々がビニール袋を使うのは店から家に戻るまでのたった十数分のことだが、ビニール袋の長い命はそのあとから始まると言っても過言ではない。
道に捨てられたビニール袋は土に還ることがない。
誰かが処分をしない限り、何年も何十年もそのまま残る。
時には家畜や野生動物が誤ってそれを飲み込み、命を落とす。
ビニール袋は、環境に害を与えることはあってもプラスを及ぼすことはない。
フンザの環境汚染やゴミ問題は年々大きなものとなっており、対応が必要である。
我々は今日から、この我々にとっても環境にとっても不毛な連鎖を止めるためにビニール袋の使用を宣言する。
まぁ、言ってることはその通りだし、これが実行できれば本当に素晴らしいことです。
ちなみに、配布されるエコバッグってもらえないのかな〜って、期待して待ってたのですが、もらえませんでした。ちぇ。
プラスチック禁止法は効果があるのか?
フンザの意識高い系の人々は今回のプラスチックバッグ禁止法についてこんな風に言っていました。
「プラスチックバッグを完全に禁止することは、過去世界のどこでも達成できていない。ヨーロッパでも、あの日本でもだ!
フンザは世界で初めて、プラスチックバッグが禁止された場所なんだ!」
確かにプラスチックバッグが完全に規制されたのはフンザが初なのかもしれませんが…
規制に、人々の意識と行動が全くついていってないと思う。
式典に参加して、長々としたスピーチを聴いて、
「いきなり完全にビニール袋使うなとか、これは絶対に無理だよ…」と思いました。
いまだに使われるレジ袋、エコバッグはどこに?
4月半ばから、レジ袋の使用が規制され、レジ袋を使っているお店は3,000Rsだかの罰則があると聞きましたが、
5月半ばの時点ではあちこちのお店でごくごく当たり前のようにビニール袋が使われていました。
中には紙袋に切り替えたお店もありますが、
ほとんどのお店に普通においてありますし、買い物をすれば何も言われなくても普通にビニール袋に入れて渡してくれます。
「ビニール袋使っていいの?罰金とかあるんでしょう?」と聞くと、
「ダメだけど、仕方ないじゃないか。お客さんだって必要だっていっている。」と返事が来る。
エコバッグを持っている人も全く見かけず。
アルティットで配布されたはずの1万個のエコバッグは一体どこに行ったんでしょう…
少なくとも私の目には、
レジ袋使用禁止を法的に施行した結果がほとんど見えませんでした。
まずはポイ捨て禁止の徹底を
これは、アルティットで開催されたレジ袋の使用禁止の発足式で会場にいる人々全てに配布されたチラシなのですが…
このチラシが、会場内のあちこちにポイ捨てされていました。
ビニール袋の使用禁止は、環境汚染を食い止め、フンザの景観を維持するために行われるもののはずですが、
その発足式典会場で、それに関するチラシがあちこちにポイ捨てされてるとかおかしいでしょう。
この式典当日だけでなく、
4月はこのレジ袋の使用禁止の関連で、大人だけでなく子供達(恐らくあんまり意味もわかっていない)も行進に駆り出されていましたが、その子供達も普通に道でポイ捨てしていました。
旦那の親戚の子供達も、雑貨屋で買ったチョコや飴を、家に帰るまでの道すがら食べてそのゴミを道にポイ。
私がいる時は叱って拾わせ、家まで自分で持ち帰りゴミ箱に捨てさせました。
多分今、フンザに、パキスタンに必要なのは、
ビニール袋の使用を停止することではなくって、ゴミのポイ捨て禁止を徹底させることです。
いくら法律でビニール袋を禁止して、例えば実際に完全にビニール袋が使用されなくなったとしても、プラスチックはビニール袋だけでなく他の物にも色々使われているし、
みんなが普通に「ポイ捨て」してたら町が綺麗になるはずがありません。
そもそもポイ捨てを普通にするってことは、それが悪いことだって意識が全くないわけなんだから、急にビニール袋ダメって言われたってその理由を理解できるわけがない。
ここら辺の「人々の環境やマナー・モラルに関する意識改善」をすっ飛ばして、
いきなりビニール袋使用禁止って言う極論を強制施行する感覚がおかしい。
こんな政策、普通のパキスタンの人々は絶対についていかないし、うまくいかないでしょう。
私達日本人は学校で自分たちの教室や廊下を生徒達自身で掃除しますが、まずはパキスタンもそういうところから初めて、環境を綺麗に保つために必要なことや意識を養うべきではと思います。
観光客だけのせいではない
最近のフンザのニュースでは、「観光客の増加による地域のゴミの汚染問題」がたびたび取り上げられています。
フンザのガールスカウトの女の子達が自然環境を守るために、ゴミ拾いをしたりゴミ箱を設置したりする活動もしています。
ただ、この問題の話をする際「観光客によるゴミ汚染」ばかりに注目されがちですが、
前述したように、フンザの子供達が普通に外でゴミのポイ捨てをするのを私は何度も見ています。
この問題をいつまでも「フンザの外から来た観光客のせい」にしていたら、永遠に解決はしないでしょう。
そういうことを指摘すると
「子供だから仕方がない」と言ったり、「フンザにそんなことをする人はいない」と憤慨したりするフンザの方もいるんですが、
子供だからこそダメなことはダメだと教えるべきだし、
「自分たちのコミュニティ内にもダメなところがある」のを目を背けずに受け入れないと、物事は良くなっていかないと思います。
環境に関する意識改善に向けて、これからの努力を
人々がごく当たり前のようにポイ捨てする問題はあるものの、
一旦ビニール袋使用禁止の法令を出したからにはそれを撤回せず、きちんと運用していってほしいもの。
順番が逆にはなってしまいますが、今後
- 環境に関する意識改善
- ポイ捨て禁止の徹底
- エコバッグ利用の推奨
これらをパキスタン、フンザの人々にきちんと伝える努力をし、
フンザが、本当の意味でのビニール袋使用停止を達成できると言いなと思っています。
これからも、フンザが綺麗な場所でありますように。
頑張れフンザのみんな。
お読みいただきありがとうございました!
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