こんにちは、スズケーです。
今年2月に、パキスタンの結婚をテーマに作られたベルギー映画「婚礼(Noces)」を見ました。
第8回マイ・フレンチ・フィルム・フェスティバルで紹介されていた映画です。
世界の映画祭で話題を集める作品やアート系作品、インディーズ系の作品など、一味違う映画をたくさん上映している”アップリンク”という映画館が、Vimeoでオンライン上映していたので。
面白い、というのとは違うけれど、
「ああ、あるね」って感じで、ドキュメンタリーみたいで興味深かったです。
日本ではDVDとかにもならないだろうなぁと思うので、今後見る機会はないかもしれませんが…海外版が見れる方はぜひ。
「婚礼(Noces)」
婚礼(Noces)
- 製作国:ベルギー
- 制作:2016年
- 上映時間:98分
- 監督 : ステファン・ストレケール
- 脚本: ステファン・ストレケール
- 出演 :
リーナ・エル・アラビ、セバスチャン・ウバニ、ババク・カリミ、オリヴィエ・グルメ - あらすじ:
18 歳のザヒラはパキスタン系ベルギー人。家族とも仲が良く、親密で良好な関係を築いていたが、ある日その状況が一変する。パキスタンの風習に従って結婚をしろというのだ。両親の期待に応えたい気持ちと、身についた西洋的慣習、自由を希求する心との間で揺れ動くザヒラ。よき理解者である兄アミールに助けを求めるも…。
Filmarksという映画情報サイトにも、この映画に関する感想などがいくつか寄せられています。
- 婚礼の映画情報・感想・評価
https://filmarks.com/movies/77933
「婚礼(Noces)」あらすじ(ネタバレ)
18 歳のザヒラはパキスタン系ベルギー人。
妊娠していて、病院に中絶の話を聞きに来ている。
付き添いは兄・アーミル。妊娠していることは家族みんな知っている。
家族は、今中絶すれば何もわからない、全て元通りになると思っている。
このまま子供を産んで恋人(パキスタン人)と結婚したいと願うザヒラは、
アーミルに父親を説得するよう頼むが、父はそれを認めない。
また、恋人にも「自分の親の希望ではなく、自分自身の希望として中絶してほしい。二人の関係がそれで終わったとしても構わない。」と拒否される。
ザヒラは諦めて予定通り中絶に向かうが、
魂の宿った子供を殺すと言う罪の意識から直前で中絶を拒む。
家族はザヒラが中絶をしたと思い、
これ以上問題が起きないうちにとザヒラをパキスタンに住む親戚の誰かと結婚させようと、
3人のお見合い相手を用意する。
両親は言う
「私達は結婚当日まで相手に会えなかった、事前に相手とスカイプで話ができるお前は幸せだ。選ぶことができるのだから。私達も時代についていかないと。」
両親の言う幸せ・時代とは、子供に両親が選んだ相手の中から選ぶことができるという多少の選択権であり、
結婚相手を自由に選べることではない。
家族の言う通り、両親が用意したお見合い相手3人とスカイプで話をするが、
ザヒラはどの相手も気に入らない。
気晴らしに行ったクラブで白人の男の子・ピエールと知り合い、好意を持たれるが「私とつきあうと殺されるかも」と拒む。
両親ののぞむ相手との結婚に抵抗をしたいと話すザヒラに、
家族はどうなるのか?家族のすすめるままに結婚したお前の姉は意志がないというのか?と説得するアーミル。
3人のお見合い相手の中で唯一フランス語を話すアドナン。
女性慣れしていないらしくスカイプでの会話でもキョドりがちなアドナンを「3人の中ではまだマシ」と評するザヒラに、
母親は「3人の中であなた自身が彼を選んだのよ。あなたは彼が好きってことよ。」と、結婚の話をそのまま進め始める。
結婚を受け入れられないザヒラは家出をし、女友達の家に逃げ込む。
両親と妹を大切に思うアーミルが、衝突を避けるために自分が全て上手くやろうと迎えにいくが
ザヒラは「家族を愛している。だけど、結婚の話をやめない限り家には戻らない」と拒否する。
「娘が家をめちゃくちゃにしてしまう、結婚しない娘は死んでしまえ」と絶望する両親。
しびれを切らした父親はザヒラの大学に乗り込んで来て
「家に戻るか、死ぬか、どちらかを選べ」とザヒラを連れ戻そうとするが、友人や教師に阻まれて失敗。
ザヒラの中絶のタイムリミット。結局、国内での手術はできなくなりオランダまでいって中絶手術を行った。
白人の友人とその父親が、ザヒラと父親の仲を修復しようとしザヒラの父親の店を訪れるが、あくまでもザヒラの希望は強制的な結婚の撤回。
しかし父親も「うちから例外を出すことはできない。自由に伴う責任や不幸を知っているのか?」と決して認めない。
両親が自分を愛していることも、自分が結婚しなければ父親は面目や信用を失いパキスタンに帰れなくなることもわかっているザヒラ。
しかし、西洋文化にもなじんでしまい、自分の意志や自由を求める気持ちを捨てきれず、どうしたらいいのかわからない。
両親の勧めたお見合いを受け入れて結婚をした姉・ヒナがザヒラの元に説得にやってくる。
「私達にとって全てが不公平だ」というザヒラに
「自分たちは女なのだから当然よ。男と女、金持ちと貧乏、健康な人と病人、公平なものなどこの世にない。」と語る。
ヒナは「自分も結婚前は嫌で仕方がなかった、でも今は夫を愛している。拒めば家族も、あなた自身も不幸になる。あなたは今幸せ?両親は今、どんなに不名誉で惨めかわかる?それでもあなたは幸せなの?」
と話し、ザヒラを家に連れ戻す。
ザヒラとアドナンの二カー(イスラム教の結婚)がスカイプ上で行われる。
全ての人が嬉しそう。唯一ザヒラをのぞいては。
二カーはしたが、まだ心から納得できていないザヒラ。
これからすぐにパキスタンに発ち、村でアドナンとの披露宴を行うと言われ、心の準備ができていなかったザヒラはふたたび家から逃げ出してしまう。
「死ぬのは怖くない」とザヒラとの交際を求めて再びやってきたピエールと二人で彼の別荘に逃げ込むザヒラ。
父親は今度こそ終わりだと絶望し、もともと良くなかった心臓にショックを受け倒れてしまう。
アーミルは父親が倒れたことをザヒラにも伝えるが、それでも戻らないザヒラ。
もうどうすればいいのかわからないアーミル。
ピエールと二人で国境を越えるために、ザヒラは妹に自分のパスポートをこっそり持って来てくれるよう頼むが、
待ち合わせの場所にはアーミルも待っていた。
アーミルは「自分たち家族はもうおしまいだ。お前もそれがわかっているのになぜこんなことを?」と問いかける。
答えられないまま立ち去ろうとするザヒラを、アーミルは「俺の大切な妹」と抱きしめながら、
父親が護身用に隠していた拳銃で射殺してしまう。
どうしようもできず、ザヒラの血を見ながら泣くアーミル。
アーミルは警察に捕まる。
拳銃などとともに、
生前ザヒラがアーミル宛に送っていた「家族を愛している」をいう手紙も押収される。
「婚礼(Noces)」感想
途中から「もしかして」とは思っていたけれど、やっぱり…な、感じの
名誉殺人で締めくくられるラスト。
これを見て何か考えることはできても、行動はなんにもできないだろうなぁと思いました。
これが彼らの文化で、伝統で、彼ら家族がそれを手放すつもりはないと言えば、
その家族ではない部外者がどうこう言えるものではないので。
パキスタン国外で生まれて、違う国でその国の文化や習慣に触れて育った人にとっては、この映画の中で起きている事はきっと他人事ではないんでしょう。
たった3人の中から、しかもスカイプで話しただけで生涯の伴侶となる夫を決めろなんておかしい、この両親は娘の幸せを考えていないと、日本人の多くが感じるかもしれないし、
確かにこの映画に出てくる両親は、娘の幸せよりも、家族の名誉を重要視しています…
でも、心から子供の事を思う両親とその子供との間でも、こういう事は起こりえる事です。
両親の幸せの物差しと、子供の物差しが、全く違うもので、両親がどうしてもそれを受け入れる事ができなかったの場合、こういった悲劇が起きるのだろうと思いました。
昔、一番仲のいいインド人の友人が結婚する事になって、私もその結婚式に参加したのですが、
お見合い結婚で、相手の女性とは1度スカイプで話をした事があるだけと言っていました。
友人はエンジニアで、日本で仕事をしている人で、そんな人がこんな昔ながらの封建的なお見合い結婚をするの?とびっくりして、色々聞きました。
そして、その時に言われた言葉が印象的でした。
だから、その二人が僕のために選んでくれた相手ならば、間違いないよ。お父さんとお母さんはいつも僕の幸せを考えてくれているんだから。
なるほど、そういう考え方もあるのか…
この友人の場合、幸いだったのは、彼と彼の両親の考え方の物差しが同じだったこと。
だから「親の考える息子の幸せ=息子本人の考える幸せ」だった。
友人も日本で働いているとはいえ、ずっとインドで育ってきたんだから、そういう考え方に抵抗はなかったのだろうと思います。
だけれど、親とは全く違う環境で育った子供は、そうやって受け入れられない事もある。
育ったバックグラウンドが違えば、たとえ親子だって、
親の考える子供の幸せが、子供本人の望むものとは全く違う事になる場合もあります。
そんな時、別に無理して味方になってくれとは言わないけれど、
自分と自分じゃない人はたとえ親子でも「別の人」って理解して、
求めてるものも大事なものも考え方も幸せと思うものも違うって、
お互いにわかって、意見を尊重しあえるといいねって思いました。
子供側だって、親の希望する通りにできない事に、劣等感や申し訳なさを感じているのだから、
「違う」ということを、親にただ認めてもらえるだけで、ずっと楽になるはず。
別の記事でも書いたけど、
自分と違うということを受け入れられないというのは、対立や争いの始まりになってしまういやすい。ずっと受け入れられないままでは、物事が悪い方向に進むばかりではないかと思います。
違う考えを納得しろとは言わないけれど、
違うってことを受け入れられるくらいの、心や頭の余裕を常に持っていたいなと思いました。
パキスタンの結婚をテーマに作られたベルギー映画「婚礼(Noces)」、見る機会があれば是非どうぞ。
日本で上映されないかな。
その後、「HVA VIL FOLK SI(What Will People Say)」も鑑賞しました。
ネタバレあらすじと感想をまとめているので、興味のある方はどうぞ。
「海外で生まれ育ったパキスタン人の娘」を、よりリアルに描いた作品です。
お読みいただきありがとうございました!
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おおー!
先日エアフランスの映画のリストにあって、見たかったけど、フランス語のみ、英語字幕なしだったので諦めた映画でした。あらすじありがとうございます。うーん。やはりそう言うラストでしたか。。。
イギリスにもイギリス生まれ育ちのパキスタン人、インド人たくさんいますが、彼らは私たちの前では普通にイギリス人してますので、実は家ではとってもトラディショナルだってことに気づいたのはここ最近です。日本人って、結構あっという間に移住先の国に馴染んじゃう家庭が多いんですよね。それととっても対称的。いろいろ思うことありますね。。。
>あつこさん
国民の多くが「異国にいる間はその国にあわせよう」というスタンスでいるのは
日本人くらいのような気もしないでもないです…
東南アジアでもインドでも、
頻繁にオシャレカフェのモニターでハリウッド映画見ながらハンバーガー食べてる欧米人旅行者結構いますからね~。