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現代の日本のムスリム事情を簡易にまとめた「日本のイスラーム」

現代の日本のムスリム事情を簡易にまとめた「日本のイスラーム」
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こんにちは、スズケーです。

以前「日本とイスラームが出会うとき」という本の感想を書きました。
日本とイスラームとの関わりの現実と問題を丁寧にまとめた内容の本でした。

日本人の宗教性についても切り取った「日本とイスラームが出会うとき」
日本人の宗教性についても切り込んだ「日本とイスラームが出会うとき」日本人の宗教性についても切り込んで考察されている小村明子さんの本「日本とイスラームが出会うとき」の紹介。...

 

昨年12月に、同じの著者の新しい本「日本のイスラーム」が刊行されていて、
最近は本は図書館で借りて読むようにしているので、入荷を待っていたのですが、
3月にようやく借りられるようになったので1番に借りてきました。

読んでる最中から、うーんとなったのですが…
残念ながら、思っていたよりかなり内容の浅い本でした…

厳しめですが、感想を。

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「日本のイスラーム」

日本のイスラーム 歴史・宗教・文化を読み解く

著者 小村明子さん

日本のイスラーム、日本人ムスリム、日本を含む異文化社会におけるイスラーム、および日本人の宗教性について研究している学者さん。
立教大学社会学部兼任講師だそうです。

2015年には「日本とイスラームが出会うとき」という本を書いていて、
今回の「日本のイスラーム」は2冊目の著書ということになります。

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内容とは直接関係ないことなのですが…
この方の文章、結構読み辛いです(前作はかなり誤字脱字もありました)。
勢いで書いてる感じの文章。

例えば今回の本だと、なんの前触れも説明もなく唐突に「特定技能のビザでは〜」と、新しく新設された在留資格の話が出てきて、
その後も特定技能という在留資格がどういうものなのかが全く説明されないまま話が続いたりします。

一応、前章で「2019年から始まった外国人人材を受け入れる新政策が始まった」とはさらっと書かれていますが、それが特定技能という在留資格だということは書かれていないので、
特定技能という在留資格について聞いたことがない人は、本を読んでいて「え?いきなり出てきたこの特定技能ってなに?なんのこと?」っていう状態に陥ってしまいます。

書いている自分はわかっているからおかしいとも・理解できないとも思わなかったのだろうけれど、
事前知識のない方が読んだら、いきなり知らない専門用語が飛び出してくるわけで、
かなーり読み手に対して不親切な書き方だなぁ、と。

他にも「〜という。〜という。〜という。」のように、文末が同じ形で終わる文章が3〜5回続くこともかなり多く。
文章の書き方でところどこと気になるところが出てきて、スムーズに読み進めないのがちょっと残念です。

内容紹介

日本のイスラーム

“日本におけるイスラームの歴史だけでなく、2019年4月から施行されている外国人材受入れ政策に関連して「難民ビザ」、またハラール・ビジネスについても述べた”
ということで、どこまで詳細に調査しているのだろう?と楽しみにしていたのですが、
冒頭でも書いた通り、思っていたよりかなり内容の浅い本で、結構がっかりしました…

この本で書かれている近年の外国人ムスリム事情は、
ある程度外国人ムスリムと接点のある者であれば誰でもわかるというか、実際に目にしたり噂を耳にしたりすることがあるような事ばかりで、
「学者として長年、日本におけるイスラームやムスリムを研究・調査してきてこれだけのことしか調べられないのか…」
と思いました。

もしかしたら私が「外国人と接点のある人ならこんなの普通に知ってるんじゃない?」って思っている当たり前・よくあることが、
「外国人と接点のない日本人は全く知らないこと」なのかもしれないし、
「調べれられる全て」って事なのかもしれませんけれど。

でも多分、ムスリムを含む外国人の色んなことを見聞きしたことがある人にとっては
この本は面白くもない「よくあること」の表面がチラッと紹介されているだけで、
「きちんと調査されて書かれた本だから」と新しいことを知るのを楽しみにして読んだら、物足りなく感じるだろうな、と。

日本のイスラーム 目次
  • はじめに
  • 第1章 イスラームとは何か
  • 第2章 日本におけるイスラームの歴史
  • 第3章 日本人ムスリム
  • 第4章 日本国内の外国人ムスリム
  • 第5章 外国人ムスリムと「難民ビザ」
  • 第6章 日本におけるハラール・ビジネスの実態
  • 第7章 日本とイスラームの共存に向けて
  • おわりに

 

日本とイスラーム 日本にいるムスリム

日本とイスラーム 日本にいるムスリム

第1章と第2章は、ほぼほぼ前作のリライト・ダイジェスト的な内容です。
イスラームについての基本知識と、
日本にイスラームがどのように伝わり、どのように広まってきたかということが簡潔にまとめられています。

細かなところは省き最低限のことをコンパクトにまとめてあって、
イスラームってどんな宗教で、どんなことをするの?とか、
どうやって日本にムスリムが増えたの?みたいな事を知るには、丁度良いかな、と思いました。
前作よりも読みやすいです。

 

第3章「日本人ムスリムについて」や第4章「日本国内の外国人ムスリム」も、前作に書かれていた「どのように日本にムスリムが増えていったのか」という点の再まとめ的内容ですが、
+αで具体例として、日本人や外国人ムスリムにインタビューしてまとめた事例も掲載されています。

日本人ムスリムについては、結婚を機に改宗した方や、友人や社会的なことなどからイスラームに興味を持って学び改宗した人など、
5つのパターンで「ムスリムになった日本人」の改宗理由や、改宗後のそれぞれのスタイルでのムスリムとしての生活の仕方がサラッと紹介されていて、
一言で日本人ムスリムと言っても、様々なスタイル・取り組み方があるのだということがわかります。

外国人ムスリムについては1990年代の、
パキスタンやイランなどが日本とビザ相互免除協定で、簡単に日本に来ることができた時代に観光目的の短期滞在で日本にやってきて、
そのまま不法就労・不法滞在をしていた外国人ムスリム男性の事例が紹介されています。

不法就労・不法滞在後、日本人と結婚して正規の在留資格を得た者、国に帰った者など様々ですが、
それらの外国人の多くが「日本人と結婚したい」と考えていた点について紹介されていて、
彼らが日本人と結婚したいと考える主な理由として
「安定して長期的に日本に滞在し働きたい」「母国では結婚に必要になる莫大な資金が日本人相手だと不要になる場合が多い」などが挙げられていました。

 

外国人ムスリムと「難民ビザ」

外国人ムスリムと「難民ビザ」

第5章「外国人ムスリムと「難民ビザ」」は、
私が一番楽しみにしていた内容かつ、読んでがっかりしたところ。
表面だけの、非常にペラペラな調査に終わってしまっているな…というのが感想です。

まず、日本の外国人受け入れ政策と、それに伴い出てくる問題についてが紹介されています。
日本の外国人受け入れ政策というのは、技能実習や特定技能などの制度・在留資格のことですが、それらが具体的にどういう制度で、どういう理念の元に施行されているものかなどについての説明はありません。

今回は本を読んでの感想なので、外国人技能実習生や特定技能についての説明はここでも省きますが、
以前紹介しているので、それぞれの制度について、詳しくはそちらを読んでいただければと。

外国人技能実習生と難民申請 法律の穴
外国人技能実習生と難民申請 法律の穴外国人技能実習生や難民申請など、「お金のため」制度を利用する外国人・日本企業の問題について。...
報道されない日本のニュース 「特定技能」で34万人の外国人労働者を雇用予定
報道されない日本のニュース 「特定技能」で34万人の外国人労働者を雇用予定新しい在留資格「特定技能」で、日本は34万人の外国人労働者を雇用予定。 パキスタンも「特定の熟練労働者のための協力覚書」に署名を行い、参加が決まりました。...

 

さらにそこから、難民申請〜特定活動の在留資格をもらって合法的に働けるようになるまでの仕組み、外国人の言うところの所謂「難民ビザ」について触れられます。

章のタイトルが「外国人ムスリムと「難民ビザ」」になっているので、
「難民申請をする人にはムスリムが多いのか?」とか「難民ビザ問題=外国人ムスリム問題」と勘違いされてしまいそうですが、
難民申請者の中にムスリムだけがやたら多いということはありません。

 

パキスタン人難民申請者

難民や難民申請がどういうものか説明したあと、
難民申請中のパキスタン人ムスリムや、パキスタン人と結婚していた日本人女性にインタビューした事例が紹介されます。

難民認定申請をしているそのパキスタン人男性にとっては
「どうやってお金を稼ぐか、どうやって日本に安定した生活基盤を作るか」ということが非常に重要で、それらの問題を全て解決するのが日本人女性との結婚であること、
「日本で働きお金を稼ぐこと」を目的として来日し、日本で安定して働くために日本人女性と結婚したパキスタン人男性が起こした問題などが
パキスタン人男性本人や、配偶者となった日本人女性の視点から語られます。

ここら辺の事例の紹介が、
実際にパキスタン人などとある程度交流や関わりがあったりする人にとっては
「そんなのわりと普通によく聞く話じゃない?」的なことで、ちょっと物足りない点。

インタビュー対象のパキスタン人男性は「政治的問題を抱えているので難民認定申請をしている」と著者に説明したそうで、著者も彼の申請が虚偽ではないのか?と疑っている様子だったけれど、本人にはぐらかされて虚偽の申請だということを確認するまでに至らず。

著者のインタビューの仕方がまずかったのか、それとも学術研究として調査しているということで警戒されたのか。

結果、難民ビザに関する調査レポートが
「彼らの難民認定申請は出稼ぎ目的ではないのか?」という推測のみで終わってしまっていて、モヤッとした感じに…

私の経験で言うと、難民認定申請中のパキスタン人にストレートに「嘘の申請でしょ」っていうと、大体の場合悪びれなくサクッとそれを認めることがほとんどだったので、
せめて「虚偽の申請だということを確認し、なぜ虚偽の申請をするのか」くらいまではフィールドワーク結果としてまとめたかったし、まとめられたはずじゃない?とか思ってしまいました。

 

特定技能制度

また、第5章のまとめとして著者は以下のように述べていました。

2019年4月から日本社会は単純労働者を合法的に迎えることになるので、「難民ビザ」といった法の穴をすり抜けたような滞在許可証の取得は減少することが予想される。現に2018年1月以降から、難民認定審査が厳しくなった。というのも、先述したように、入管では増え続ける申請者への審査が長引くことも考慮して、2018年1月15日から、難民認定申請中のものに付与する在留資格の運用を見直すことにしたからである。

この本の中で一番がっかりしたのがここ。
考え方は人それぞれとはいえ、
長いことフィールド調査を続けて、いろんな人にインタビューしているのに、そういう風に考えちゃうのかぁ…と。

「単純労働者を合法的に迎えることになる」というのは、特定技能という新しい在留資格のことを指していますが、
私自身は、特定技能の制度ができたからと言って、難民申請をする人が減るとは到底思えないです。

「難民認定申請中のものに付与する在留資格の運用を見直し」については、
「技能実習生が途中で逃げて難民申請をしても、特定活動の在留資格に切り替えはできませんよ」というルールが追加されたため、技能実習生による難民申請だけは実際に減ったと思います。

ただ、短期滞在ビザで日本に来て難民申請する人は減らない。
私はパキスタン人の難民申請者の通訳をすることもあるのですが、みんな短期滞在ビザで日本に来て難民申請しています。

特定技能の在留資格については、以前書いた記事「報道されない日本のニュース 「特定技能」で34万人の外国人労働者を雇用予定」で紹介していますが、
特定技能の在留資格を得るためには、日本語能力や技能のテストをパスする必要がありますし、日本の企業とマッチングしてもらうために母国の専門取り次ぎ機関に支払う手数料もかなりまとまった額が必要です。
場合によっては日本に来たあとも、お給料から斡旋会社に手数料や諸経費を支払う必要があるかもしれません。

それに対し、短期滞在ビザで来日し、難民申請〜特定資格の在留資格を得て働く場合、ブローカーを通すならばその手数料は支払う必要がありますが、
日本語が全くできなくても日本に来れますし、来日後は在日同国人のネットワークで仕事を探すことだってできます。
特定資格の在留資格を得るまでの間は法的には就労はできないはずですが、その間、日本政府から生活保護費の支給を貰えることもありますし、同国人が営む会社ならばこっそり働くこともできます。
もちろん、斡旋会社に手数料などを払う必要もなく、お給料はそのまま自分のものになります。

はじめから難民申請して日本で働くつもりの人は、とにかく今すぐ稼ぎたい人ばっかりで、
日本に来る前から日本語を覚えて努力しようという殊勝な人は少ないし、お給料の一部をいつまでも斡旋会社に支払うようなこともムダだと考える人が多い。
以前より簡単に日本で働く資格を得られる特定技能の制度ができたからと言って、短期滞在ビザで来日して難民申請する人が減るとはちょっと思えません。

「日本語を事前に勉強して日本でちゃんと働こう」と考える人と、
「難民申請の制度を使えばブローカーに一度手数料を払うだけで日本に行けて働ける」と考える人は、そもそも全く別のタイプの人間だと思います。

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日本で働きたい外国人 不法滞在よりも難民申請日本で働きたい外国人や、斡旋をするビザブローカー。不法滞在後に結婚して在留特別許可を狙うより、短期滞在中に難民申請をするケースが増えています。...

 

ハラール・ビジネス

ハラール・ビジネス

第6章では、日本におけるハラール・ビジネス=ムスリム向けの食品販売やレストランの実態として、
今の日本におけるハラール認証やハラール対応レストランは、
非ムスリムによる、完全にビジネスありきのものとなってしまっていて、不必要に複雑化してしまっていることや、
日本にいる外国人ムスリムとの認識の間に隔離が起きてしまっていることなどの問題点が紹介されています。

ここら辺は、私も常々、ハラール認証をビジネス化することはどうなのだろう?と思っていたことなので、
外国人ムスリムが実際どのように日本で食材を選んだり、レストランを利用しているのかなどの実際の調査結果を知ることができて、興味深かったです。

 

読みやすいけれど、広く浅くな内容

第7章はこれまでの内容の総まとめ、と言った感じ。

全体として、前作よりもインタビュー事例などの掲載が増えて、読みやすくなったなぁと思うのですが、
色んな内容を詰め込みすぎて、それぞれ個々の内容が浅くなっちゃったなぁ…という印象の本でした。

第1〜3章は、もう少しページ数を削っても良かったような気も。
インタビュー事例も、わざわざインタビューしなくても、普通に耳にする内容ばかりだよね?というものが多くて、
もう少し突っ込んだ内容まで聞き込みできるともっと良かったなぁ…と私は思いました。

それでも、外国人等と普段あまり接点尾内人からすると、十分に「こんなことが!?」って驚くような内容なのかもしれませんが…

そんなわけで、普段外国人ムスリムに接点のある方などは、
過剰に期待しすぎず読んだ方が良いかなって思います。

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特定技能の在留資格と難民認定申請者数の関係などについては、
これからまた調査をしていくことで新たに見えてくることもあるかと思いますし、
ムスリム人口や日本のムスリム第二世代が増えていることで、
これから日本の中のイスラームも大きく変わってくるのかもしれません。

著者は引き続き、フィールドワークを続けられるのだろうと思われますし、
また数年後、新しい著書が出るのをのんびりまってます。

今度はもうちょっと掲載テーマを絞って、深いところまで調査された読み応えのあるものになってると嬉しいです。

日本のムスリム  

お読みいただきありがとうございました!
コメント欄はちょっと下にあります。承認式ですが、コメントはお気軽にどうぞ。

ABOUT ME
スズケー
フンザ出身のパキスタン人と国際結婚しています。 デザイナーとライターとアーティスト、時々通訳をしつつ、 投資もやってます。 お金稼いでパキスタンと日本とインドと、好きに行ったり来たりしたい。
 
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