宗教(イスラーム)

日本人の宗教性についても切り込んだ「日本とイスラームが出会うとき」

日本人の宗教性についても切り取った「日本とイスラームが出会うとき」

こんにちは、スズケーです。

イスラーム関連の本は色々ありますが、
私はイスラーム法学者やら、イスラーム研究家やらの方の書く極端に一方向に断定的すぎる内容の本があまり好きではありません。

言いたいことは最初から決まっていて、それに目指して自分の都合のいいことだけをグイグイ書いてって
読者に「自分の頭で考えさせる余地」を与えない感じ、自分で考えることを放棄させるような感じが嫌です。

私はどんなことでも、まず知って、それから自分で考えたい。
だからどちらかと言うと、調べられた事実が淡々とまとめられているだけの論文的なものや、
ジャーナリストが公平な目線から色んなケースを取材し、紹介しているようなものの方が
断然読んでみたいという気になるし、読んでいて楽しいです。

以前紹介した「日本の中でイスラム教を信じる」とかも、そんな本の一つ。

日本の中でイスラム教を信じる
多角的な視点から日本に住むムスリムを知れる「日本の中でイスラム教を信じる」様々視点から日本に住むムスリムや彼らの考え、それぞれのイスラーム感を知れる本「日本の中でイスラム教を信じる」の紹介。...
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今回はまた別の「自分で考える余地を与えてくれる本」を紹介したいと思います。

小村 明子さん著「日本とイスラームが出会うとき」。
ちょっと読みにくさはあるんですが、日本とイスラームとの関わりの現実と問題を、冷静に知ることのできる良書です。

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「日本とイスラームが出会うとき」

「日本とイスラームが出会うとき」

著者 小村明子さん

日本のイスラーム、日本人ムスリム、日本を含む異文化社会におけるイスラーム、および日本人の宗教性について研究している方です。

著書は多くはないですが、日本のイスラームについて、講演会やセミナーなんかも開催されている模様。

ムスリム訪日客が増え、ムスリムインバウンドを意識することが増えた現代、中立的な立場でこういう研究をしている学者さんは重宝されるのでは、と思います。

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2019年12月に、「日本のイスラーム 歴史・宗教・文化を読み解く」という、小村明子さんの新しい本も出ているので、こちらも読んでみたいなぁ、と思っているのですが
図書館にまだ入ってないので、現時点では未読。

内容紹介

「日本とイスラームが出会うとき」

「日本とイスラームが出会うとき」は、日本におけるイスラームの歴史と現状がとても丁寧に書かれている本です。
日本人がいかにイスラームを知り、理解していったのか、そしてどのように広まっていったのかという過程を知ることが出来ます。

堅実な取材に基づいて、一方的なバイアスをかけることなく中立的な立場から淡々と事実が書かれた、良くも悪くも教科書的な本。

「教科書的」ということで、読んでいて面白い、という本ではないのですが、
「イスラームと日本人」というテーマに関する情報を、俯瞰的に見ることができるし、
非ムスリムの日本人がイスラームを知る・考えるという上で素晴らしい本だ思います。

結構誤字脱字があるのだけちょっと気になったけど。

日本とイスラームが出会うとき 目次
  • 第1章  世界宗教としてのイスラーム―イスラームの歴史と六信五行
  • 第2章 日本におけるイスラームの歴史―明治の邂逅から一九八〇年代前半まで
  • 第3章 日本におけるイスラームの歴史―一九八〇年代後半から現在まで
  • 第4章 日本のイスラームの現状について
  • 第5章 日本でムスリムとして生きる、その現実
  • 第6章 「イスラームから離れる」ということ
  • 第7章 日本的イスラームの試み
  • 第8章 「大乗イスラーム」という思想
  • 第9章 非ムスリムの日本人によるイスラーム理解
  • 第10章 何故イスラームは日本社会に広まらないのか―日本とイスラームの比較文化論

 

日本でのイスラーム事情・日本人のイスラーム事情

テーマをピンポイントに「日本におけるイスラーム」に内容を絞り、
日本でのイスラーム事情・日本人のイスラーム事情を、かなり客観的にまとめています。

本書の前半では、戦前に国策として、植民地化を狙う地域や占領地の情報収集・民心把握を目的としてイスラーム研究が始まったこと、
戦後、国の後押しをなくして自力で布教活動をしなければならなくなった日本人ムスリム達が、より正しいイスラームを学ぶための外国人ムスリムとの交流を始めたことなど、
日本のイスラームの歴史をじっくりたどりつつ紹介しています。

もちろん、1980年代後半のバブル時代に外国人労働者が大量流入し、イラン・パキスタン・バングラデシュなどからの来日者や、彼らと結婚する日本人女性によって日本のムスリム人口が一気に増加したことなどについても紹介があります。

まさに教科書的に淡々と事実が並べられているだけで、正直、最初の方は面白くないので、なかなか読み進みませんでした…

 

日本で生きるムスリム達が、今抱えている問題

近代のイスラームとしては、外国人・日本人ムスリムへの聞き取り調査も丁寧に行ったうえで、日本で生きるムスリム達が、今抱えている問題について語られます。

ここら辺からは、内容が身近なものになってくることもあり、みなさん興味深く読めるのではないかと。

全体的には、結婚を機に改宗した日本人女性ムスリムへのインタビューが多めです。

イスラームの知識を学ぶ機会が少ない日本人女性ムスリムが、自分の中での明確なイスラームを確立できずに悩む様子や、日本で生活していく中でイスラームをどのように実践するか戸惑う様子、
また、イスラームを知るきっかけとなった配偶者の外国人男性と離婚してしまった女性たちのその後の生き方についてなども紹介されています。

 

日本人であるが故に、日本社会とイスラームの間に立って揺れる日本人ムスリムの苦悩についてや、
周囲の日本人がイスラームを「宗教」というよりも「異文化」と認識しているゆえに起きる日本人ムスリムへの対応の戸惑いについてのことなどは、
日本のムスリムについて書かれた本にはたいてい同様のことが書かれています。

イスラームを「異文化」と捉えた場合、
外国人ムスリムが行う、日本にはない礼拝や服装などの慣習に対して「自分たちとは異なる人達だから仕方がない」と受容する、ある意味「諦める」ことが出来ても、
日本人ムスリムがすると「日本人なのに異文化の生活をしているのはなぜ」という戸惑いが生まれたりする。

私達日本人が生活の中で「宗教」に重きをおかず、ほとんど無頓着に生活していることや
個よりも群として足並みを乱さぬことが無意識のうちに優先されているが故ですね。

信仰を持つことには積極的ではないのに、宗教行為を「異文化行事」「イベント」として無意識に受け入れていることや、
宗教という明確なものに頼らない、モヤッとした、でも一定の統一された道徳・倫理観が存在する。
日本という国と日本人って独特なんだなぁと改めて認識しました。

こうやって、ムスリムへの聞き取り調査やその結果を知ることで、
日本人の考え方、文化、傾向などが浮き彫りになってくるのは面白かったです。

 

シンクレティズム(宗教多元主義)

本書の後半では、他ではあまり語られることのない、1970年代に「日本的イスラーム」「大乗イスラーム」を志した独特のイスラーム布教活動を行っていた「日本イスラム教団」について触れられています。

今の日本のムスリム達には、異端としてもはや語られることすらほとんどなくなった団体の活動ではあるのですが、
著者は「イスラームがより多くの日本人に受け入れられるためには、イスラーム的な考えと日本人の宗教観とを融合する考えを取り入れることが必要ではないか」と考えていて、
この団体とその活動について、かなり力を入れて調査されています。

彼らの活動の記録を見ると、日本人にとっての宗教の存在、考え方や、異文化としてのイスラームが違和感なく日本人に受け入れられるための布教方法など、
なるほどと考えさせられることも多いです。

 

私自身は、自分の宗教観としては、シンクレティズム(宗教多元主義)の考えを支持していています。
「イスラームがより多くの日本人に受け入れられるためには、イスラーム的な考えと日本人の宗教観とを融合する考えを取り入れることが必要ではないか」と考える著者に通づるところがあるかと。

ただ、この考えは、宗教と異文化を混同してしまう部分もあるし、
大乗イスラームの例からしても、マジョリティなムスリムからすればあきらかに異端的。
もしかするとそれによって、知らぬ間に相手とのすれ違いが起きてしまっていることもあるのではないか?というのは、本書を読んでからちょっと気になりました。

私が特定の信仰を持っていないからと言って、相手の信仰を否定するつもりはないし、私なりに相手の信仰は尊重しているつもり。
今のところ、私自身としてはこれで問題が起きたり、相手を不快にさせたりということはない、と思うのですが…

大乗イスラームという考え方は、今のムスリムのほとんどが考える「正しいイスラーム」ではないかもしれないし、
ほとんどのムスリムが「それはイスラームではない」と言うかもしれないけれど、私はありかなぁ、と思いました。

人間なんて、所詮自分たちにとって都合の良いものを取り入れていく生き物なのだし、
宗教だって、その時代・その場所・土着の文化に合わせて変化していくもの、
変えようとせずとも変わっていってしまうものだと私は思っています。
実際、大乗イスラームという考えを用いることで、日本のムスリム人口は一気に増えた。

預言者ムハンマドなき今、クルアーンに書いてあることの真の意味なんて誰にもわからないし、イスラーム学者の解釈だって正しいのかどうかわからない。

「アッラーの他に神はなく、預言者ムハンマドはアッラーの使徒である」
この部分さえブレていなければ、あとは各々の心のままにアッラーと自分の間で信仰をしていけばいいのではないか、と思っています。

同じムスリム同士でも、他者の信仰をジャッジする権利や資格はないし、それを出来るのは、あなた達の言う「アッラー」だけのはず。

大乗イスラーム

 

日本イスラム教団の活動を比較的肯定的に書いていたり、もしかしたらムスリムからしてみると納得いかない内容の本、なのかもしれませんが、
日本人が、ムスリムと日本社会の中で共存していくため、
自分たちの価値観や考え方を一度見つめ直してみるべきではないか?ということを思い起こさせてくれるきっかけとなりうる本で、
私はなかなか面白く読みました。

時間が経ったら、自分の環境が変わったりしたら、再読してみたいな、とも思います。

ムスリムも非ムスリムの日本人も、多文化共生などに興味がある方も、読んでみるといいのではないでしょうか。

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新しい方も、早く読みたいなぁ…

 

追記

「日本のイスラーム」も読みました!
が、思っていたよりかなり浅い内容で結構がっかりしました。
日本に住んでいるムスリム(やパキスタン人)についてあまり知識がなく、とりあえず広く浅く情報を得たい、というのならばいいかもしれません。

現代の日本のムスリム事情を簡易にまとめた「日本のイスラーム」
現代の日本のムスリム事情を簡易にまとめた「日本のイスラーム」パキスタン人難民認定申請者と関わる者から見た、現代の日本のムスリム事情を簡易にまとめた本「日本のイスラーム 歴史・宗教・文化を読み解く」の紹介。...

 

 

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フンザ出身のパキスタン人と国際結婚しています。 デザイナーとライターとアーティスト、時々通訳をしつつ、 投資もやってます。 お金稼いでパキスタンと日本とインドと、好きに行ったり来たりしたい。
 
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