こんにちは、スズケーです。
以前、「日本はパキスタンから熟練した人材を雇用し、人口減少に対応するために就労ビザを提供する」と在パキスタンの日本大使が声明を出しているというニュースを紹介しました。
2019年12月23日、正式に、この「特定の熟練労働者のための協力覚書」に日本政府とパキスタン政府が署名を行いました。
在パキスタン日本大使館のサイトに、英語でのみニュースが掲載されています。
私はパキスタン人が嫌いなわけではないし、日本で働きたいと思っているパキスタン人の友人だっているし、彼らにとってチャンスが増えるのはいいことだって思うし、喜ばしいことではあるのですが…
現在、外国人技能実習制度で雇用者の日本側・働く外国人側双方に様々な問題があることによって様々な事件が起きていて、それは何ら解決していないのに、
外国人技能実習制度と大差ない制度を新しく作るのはどうなのだろうか?と言う点に関して、問題を感じています。
目次
日本で公開されない日本のニュース
さてこの、2019年12月23日に日本政府とパキスタン政府が署名を行った、
海外から熟練労働者の大量雇用をするという新しい制度。
就労を目的とした新たな在留資格で「特定技能」といいます。
2019年4月1日より導入されました。
今回、パキスタンとの間で、その制度に関する署名が行われた、ということですね。
パキスタン以外の対象国としては、フィリピン、タイ、インドネシア、カンボジア、モンゴル、ベトナム、ウズベキスタン、ネパール、スリランカ、バングラデシュなどが挙げられています。
今後5年間で34万人の外国人熟練労働者を雇用する予定だそうです。
この話はパキスタンとの間では、2019年5月から話が出ていたようで、パキスタンではその頃からニュースになっています。
在留資格とかビザとかよくわからない…って言う場合は、
まずこちらの記事を読んでみてください。
簡単に説明しています。
在パキスタン日本大使館のサイトでは、英語でのみ進捗に関する情報や、今回の「署名を行った」ニュースが紹介されていますが
日本語では、この件に関しては一切触れられていません。
わざと日本では隠してるんですかぁ?って勘ぐりたくもなる。
パキスタンとの特定の熟練労働者のための協力覚書
さすがに、外務省の報道発表ページにはほんのりと掲載されていました。
パキスタン・イスラム共和国との在留資格「特定技能」を有する外国人に係る制度の適正な運用のための情報連携の基本的枠組みに関する協力覚書(MOC)の署名
- 本23日(現地時間同日),法務省,外務省,厚生労働省及び警察庁とパキスタン在外パキスタン人・人材育成省との間で,在留資格「特定技能」を有する外国人に係る制度の適正な運用のための情報連携の基本的枠組みに関する協力覚書(仮訳(PDF)/英文(PDF))の署名がなされました。
- この協力覚書は,両国が一定の専門性・技能を有する人材(特定技能外国人)の円滑かつ適正な送出し・受入れの確保(特に,悪質な仲介事業者の排除)及び特定技能外国人の日本国での就労における問題の解決等のための情報連携及び協議の基本的枠組みを定めています。
- 外務省は,国内関係省庁と連携し,パキスタンとの間で,本制度の適正な運用における協力を通じて両国間の互恵的な関係を強化させていきます。
引用元:パキスタン・イスラム共和国との在留資格「特定技能」を有する外国人に係る制度の適正な運用のための情報連携の基本的枠組みに関する協力覚書(MOC)の署名
在パキスタン日本国大使館のサイトに英語で掲載されているニュースはこんな感じ。
訳が間違ってたらごめん。
日本政府とパキスタン政府は、特定の熟練労働者のための協力覚書(MOC)に署名しました
イスラマバード:2019年12月23日日本政府は本日、パキスタン政府と”特定の熟練労働者”に関する協力覚書(MOC)に署名をしました。これは、パキスタンの熟練労働者が必要とされる試験に合格した後、この協力枠組みの下で、日本で雇用機会を得るための道を開くことを目的としています。
パキスタンは、この政策の第2段階で日本が熟練した人材を採用しようとしている上位10か国の1つです。日本政府はすでに、フィリピン、タイ、インドネシア、カンボジア、モンゴル、ベトナム、ウズベキスタン、ネパール、スリランカ、バングラデシュを含む10カ国と同様の協力覚書に署名しています。
日本政府は2019年4月1日に発効した特定の熟練労働者向けの新しい在留資格を作成しました。この目的のために「入国管理および難民認定法」を改正し、外国人労働者の受け入れのための包括的な措置を講じました。日本は高齢化社会により深刻な労働力不足に直面しており、この制度は特定の14分野(※下記のリスト)で専門知識と熟練技術を有する外国人を受け入れるために導入されました。
日本は、今後5年間のうちに、世界中で34万人の熟練労働者を雇用する予定ですが、これに関して国別の割り当てなどはありません。
2019年12月23日、パキスタン駐日日本大使:松田邦紀、パキスタン海外人材開発省長官:アーミル・ハサンが式典での協力に関する覚書に署名しました。 2日間の訪問でパキスタンにいた安倍晋三総理大臣の補佐である薗浦健太郎自民党総裁外交特別補佐も署名式に立ち会いました。
この方針の下では、雇用のために日本に入国するすべての外国人熟練労働者は、受け入れ組織との雇用契約に署名する前に、技能試験と日本語の基礎試験に合格する必要があります。このMOCは、悪意のある仲介事業者(エージェント/コンサルタント)による介入を防ぐために署名されました。
式典では、松田邦紀氏は「この協力はパキスタンの労働者に仕事の機会を提供するだけでなく、教育、ビジネス、観光を含む日パ協力の新たな機会を創出するだろう。パキスタンの有能な労働者の多くが、この協力の枠組みを通じて日本で働く機会を得ることを願っています。」と述べました。熟練労働者向けの14の特定分野は以下の通り。
介護、建物の清掃管理、鍛造および鋳造、機械部品および金型産業、電気、電子および情報産業、建設産業、造船/船舶機械産業、自動車整備、航空産業、宿泊産業、農業、水産養殖、食品および飲料の製造、外食産業
就労を目的とした新たな在留資格「特定技能」
就労を目的とした新たな在留資格「特定技能」とはどういうものかなのですが…
一定の専門性・技能を有し、即戦力となる外国人材を受け入れるという目的で作られたのが「特定技能」という在留資格です。
2019年4月1日より導入されました。
受入れ対象分野については、真に必要な分野=人材不足の現場に限定されています。
「特定技能」の在留資格は、その方の技術の熟練度などに応じて二段階に別れていて、
特定技能1号は、特定産業分野に属する相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格で、滞在は通算5年まで。家族の帯同は基本的には認められていません。
特定技能2号は、特定産業分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格で、滞在期間に制限はなく、要件を満たせば家族の帯同も可能です。
特定産業分野に属する相当程度の知識又は経験を必要とする技能や熟練した技能が必要なので、特定技能での在留資格を得るには、技能試験があります。
技能実習生や留学生など、すでに日本にいる外国人が、特定技能への在留資格の変更をすることも可能です。
これに関しては、日本で技術や勉強をしてきた外国人に撮っては、就労へのハードルが下がったことになり、喜ばしいことですね。
従来の就労資格 | 技能実習 | 特定技能(1号) | 特定技能(2号) | |
---|---|---|---|---|
在留期間 | 制限なし (更新可能) | 技能実習1号:1年以内、技能実習2号:2年以内、技能実習3号:2年以内(合計で最長5年) | 最長5年 | 制限なし (更新可能) |
外国人の技能水準 | 技能は専門的・技術的な実務経験、その他は関連する学歴などが必要 | なし | 相当程度の知識又は技能が必要 | 熟練した技能が必要 |
単純労働分野への就労 | 不可 | 事実上可能 | 事実上可能 | 事実上可能 |
入国時の試験 | なし | なし | 技能水準、日本語能力水準を試験で確認 | 技能水準を試験で確認 |
家族の帯同 | 要件を満たせば可能(配偶者、子) | 不可 | 基本的に不可 | 要件を満たせば可能(配偶者、子) |
転籍・転職 | 可能 | 原則不可 | 同一の業務区分内又は試験によりその技能水準の共通性が確認されている業務区分間において転職可能 | 同一の業務区分内又は試験によりその技能水準の共通性が確認されている業務区分間において転職可能 |
※スズケーが把握・認識してる内容です。間違いなどがある場合はご連絡下さい
すでに導入が始まった制度ですが、
新しい在留資格として「特定技能」っていうことができたことすら、ほとんどの日本人は知らないのでは?
より細かいことなどについては、法務省のサイトにて確認できます。
特定技能と、従来の就労関連の在留資格との違い
従来の就労資格との大きな違いは、所謂「単純労働分野」とされていた職種にも雇用・就労が可能になった、と言う点です。
これまでの日本は、人手不足を補うことを目的に外国人労働者に対して就労系在留資格を与えるというスタンスではなかったため、
いわゆる単純労働とされる仕事に就くための在留資格は存在せず、
就労できるのは「専門的・技術的分野」と言われる高度な専門的な職業や技術者等に限定されていました。
ただ、今の日本で人手不足と言われている職種は、所謂「単純労働分野」のものであり、そういった分野からの外国人労働者受け入れ拡大を望む声も多いことなどから、
新たな在留資格として「特定技能」を新設し、単純労働分野と言われるような職種でも外国人が就労することが可能となりました。
現在の対象国は、前述した通り、
パキスタン、フィリピン、タイ、インドネシア、カンボジア、モンゴル、ベトナム、ウズベキスタン、ネパール、スリランカ、バングラデシュなど。
本当に、正当な賃金で優秀な技能者を雇おうと言う制度であるならば、
対象国に欧米諸国が入っていないのはなんでなんでしょうね?
外国人技能実習制度の在留資格である「技能実習」は、名目上は技能移転を通じた開発途上国への国際協力が目的となっていますが(あくまでも名目上の話であり、実際にその通りに有効に使われている感じはしませんが)、
「特定技能」は完全に、日本の人手不足を外国人労働者で補おうという安易な目的の制度ではないか、と私は思います。
前述した通り、これまで単純労働と言われていた分野で就労が可能になったことや、「熟練労働者を必要としている」と言いながら、必須とされる技術レベルが実質的には従来の就労資格よりも大分ハードルが下がっていると考えられることなどからも、
「とにかく誰でもいいので、日本人が働きたがらない分野で働く人が欲しい」
みたいな雰囲気を感じます。
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外国人技能者の雇用に関して問題は起きないのか?
新しく外国人労働者がどんどん日本に入ってくるようになると聞いて、
一番気になるのは「外国人がたくさん日本に入ってくることによって問題は起きないのか?」ということ。
すでに数年前から日本では外国人技能実習制度により、外国人がより多く訪れ、様々な場所で働く外国人を見かけることが多くなりました。
そもそも外国人技能実習制度は、日本で働くための制度ではなく「日本で技術を学んで母国に持ち帰り、母国の発展に貢献する」ための制度ですが、
その理念を理解して外国人技能実習制度を利用していると言える人は日本側・外国側双方ともに少なく、
「とにかく日本で働いて稼げる」「外国人を安い賃金で雇える」という理由だけでこの制度を利用している人も多いというのが現状です。
日本側・外国側とも、互いそんな適当な気持で制度を利用している人がいるため、
技能実習生の外国人が逃げて虚偽の難民申請をしたり、日本人雇用主が技能実習生を劣悪な環境で働かせたり…という問題がつきまとっています。
外国人技能実習制度でこれだけ様々な問題が出てきていて、それらは何の解決もされていないし、防止や解決に向けての対策も何もとられていないようなのに、
新しく外国人労働者を日本に呼び込む政策を実施して大丈夫なんでしょうか?
まずは今ある外国人技能実習制度の問題に目を向け、
日本が外国人労働者を受け入れられる環境を作り、外国人労働者が不正を行えなくするような制度と法律を整えてからやるべきではないのか?と思うんですが。
今回の協力覚書に関して、在パキスタン日本国大使館のサイトには
「悪意のある仲介事業者(エージェント/コンサルタント)による介入を防ぐために署名された」とあります。
具体的には以下のような行為を防ぐためだそうです。
- 保証金の徴収その他名目のいかんを問わず、特定技能外国人又は特定技能外国人になろうとする者(以下「特定技能外国人等」という)、その親族又はそれらの者の関係者の金銭その他の財産を管理すること。
- 契約の不履行について不法な金銭の支払を課す契約その他の不当に金銭その他の財産の移転を予定する契約をすること。
- 暴行、脅迫、自由の制限その他特定技能外国人等の人権を侵害 する行為。
- 日本国における出入国管理制度上の手続又は査証制度上の手続に関し、不正に許可又は査証等を受けさせる目的で、偽造された、変造された又は虚偽の文書若しくは図画を行使し、又は提供する行為。
- 特定技能外国人等から徴収する手数料その他の費用について、当該外国人に算出基準を示さず、かつ、その額及び内訳を十分に理解させないで、当該費用を徴収する行為。
確かにこれらの行為が起きないようにする協力覚書は必要でしょう。
っていうか、起きないようにして当たり前ーっ。
ただ、現在の外国人技能実習制度では、残念ながら「悪意のある仲介事業者」は存在しており、外国人技能実習生として来日する人の中には、法外な手数料を支払ってようやく資格を得ることが出来たという人も少なくありません。
今回の協力覚書で「悪意のある仲介事業者による介入を防ぐ」などと掲げるのならば、
何でまず、すでに始まっている外国人技能実習制度で、そういった悪意のある仲介事業者が入れなくするような取り組みを行わないのか。
「特定技能」の制度でも、「悪意のある仲介事業者」が誕生するのは時間の問題でしょう。
こんな覚書を交わしただけで不正がなくなるとは全く思えない。
書面で約束だけしたって、実際の対策をとらなけりゃ意味ないし、そんなものでなくなる不正なら最初から起きないよね。
政治家やらお偉いさんのやることは、私のような凡人には理解できませんが、
きっと私のわからぬところで、なんやら対策は立ててあるのかもしれません、多分(と思いたい)。
「日本で働く外国人が増えること」で、日本人にも外国人にも、不幸な人がでないことを願います。
広がってるの?特定技能
ちなみに、特定技能という在留資格に関しては、相反するこんなニュースが。
ん?
結局、「特定技能」での外国人の就労は広まってるの?広まってないの?
個人的には、多分、
日本への就職を斡旋するブローカーが私腹を肥やせる国では「技能実習」も「特定技能」も広まってるんだろうなぁって思いますよ…
ネパールで応募者殺到とか聞くと、特に、ね。
なんにせよ、すでに決まってしまっているし、始まってしまっている制度です。
そしてパキスタンからも、熟練労働者が日本の人手不足解消のために近々参加となるのでしょう。
どうか日本側も外国側も、この制度に参加する人々、利用する人々が不正なく正しく使ってくれますように。
双方にとって残念な問題が起きることがありませんように。
そうやって願うしかありません。
難しいでしょうけれどね。
お読みいただきありがとうございました!
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