こんにちは、スズケーです。
どうやら昨日、パキスタンを紹介するテレビ番組が放送されていたようですね。
我が家にはテレビがないので私は見てませんけど。
所さんも驚いた!世界の「ナンじゃこりゃ!?」奇跡の光景&大探検SP!という番組で、
テレビ東京のサイトにあった番組内容や、テレビを見た友人が教えてくれた情報によると、
岩塩採掘で有名なケウラーと塩のモスク、
ジェーラムにある世界遺産のロータスフォート、
チトラールのカラシュバレーの紹介がメインだったようです。
その中で、チトラールのカラシュバレーに関して、
聞いた限りではちょっと「あれ?」と思う紹介のされ方だったようなので、
ちょっと情報をまとめてみようかと思います。
目次
パキスタンの少数民族・カラーシャ族
独特の文化を持つカーフィル(異教徒)
国民の大多数がイスラームを信仰するパキスタン。
ヒンドゥーやシク、クリスチャンは圧倒的少数派のマイノリティな存在です。
そんなマイノリティな存在の中でもひときわ異色な存在として存在するのがカラーシャ族。
アフガニスタン国境に近いエリアに暮らす、独自の神を信仰する4000〜5000人の少数民族です。
「異教徒(カーフィル)の地=カフィリスタン」と呼ばれることもあります。
かつては国境をはさんだアフガニスタン側にもカーフィルが暮らすカフィリスタンがありましたが、19世紀末に当時のアフガニスタンの為政者が武力行使をもってイスラムへの改宗を迫り、また土地の呼び方も光の地を意味するヌーリスタンへ改名。
カーフィルの住んでいた土地の一部は当時のチトラール王国の一部であったために強制改宗を免れ、現在のカラーシャ族がカーフィルの宗教と伝統を残す唯一の存在となりました。
独自の言語であるカラーシャ語を話しますが、ウルドゥー語やパシュトゥー語も通じます。
もともとは農業と牧畜を首とする自給自足の生活を営んできましたが、近年では他の地域から流入する貨幣や物資により生活スタイルや価値観も徐々に変化し、現在は金銭にも重きがおかれるようになってきました。
カラーシャの女性のカラフルな民族衣装
カラーシャ族で特に有名なものと言えば、やっぱり女性の民族衣装!
襟元、袖、裾にカラフルな毛糸で毛糸で刺繍を施したペラハンと呼ばれる黒地のワンピースに手織りの帯ベルト。
顔を飾るように編まれた三つ編みの頭の上に、子安貝とビーズで飾られたシュシュトと呼ばれる飾りをかぶり、胸元にはビーズの首飾りが連なります。
非常にカラフルで豪華で手のかかる衣装ですが、彼女達はこの衣装を日常的に着ています。
儀式やお祭りの際にはさらに大きな飾りのついた豪華な帽子をかぶり、彼女達の美しさをより引き立てます。
この民族衣装姿の美しい少女や女性の姿を写真に収めるためにカラシュバレーを訪れる旅行者も少なくありません。
男性も頭からガバッとかぶるスタイルの毛織りの伝統衣装があったのですが、現在は他のパキスタン人男性同様、シャルワールカミーズを着ていることがほとんどです。
カラーシャ独自の信仰
カラーシャの人々は独自の信仰を持っています。
古代の日本同様、自然崇拝(アニミズム)の色合いが濃く、暮らしと自然に密着した幾多のものに神々が存在します。
文字を持たなかったため、コーランや聖書のような聖典もなく、毎日の礼拝などの義務もありません。
偶像崇拝を禁じるイスラームとは異なり、神体や祖先を表わす彫像もありますし、お祭りも多数執り行われます。
お祭りは季節の移り変わりに合わせて開かれるカラーシャの人々の宗教行事の一つ。
春のジョシ、夏のウチャオ、冬のチョウモスなどが有名で、このお祭りが開催される時期は、パキスタン国内外から多くの観光客がカラシュバレーを訪れます。
「浄・不浄」、日本で言うところの「ハレとケ」の概念が強いのも特徴です。
男、水、ワイン、小麦、山羊などが聖なるもの(浄)と考えられ、神に祈願や感謝をする際にはデワと呼ばれる祭壇に山羊の血や小麦のパンを捧げます。
女、にわとり、女の生理と出産、墓場などは不浄と考えられています。
カラーシャ族の住む谷・カラシュバレー
パキスタン北西部、アフガニスタンとの国境沿いに南北に延びるカイバル・パシュトゥンクヮ州。
その北部一帯に広がるエリアをチトラールと言いますが、
カラーシャの人々は、チトラールの中でも特にアフガニスタン国境に近い
3つの谷、ボンボレット、ルンブール、ビリールに住んでいます。
チトラール(カラシュバレー)への行き方・アクセス方法
カラシュバレーを訪問するにはまずチトラールへ向かいます。
チトラール中心部より乗り合いジープやタクシーでさらに2〜3時間ほど行ったところにあります。
移動中は警察や軍のチェックポストも多いため、パスポートとビザのコピーをかなり多めに用意しておくのがおすすめです。
チトラールでは外国人はFRO(Foreigner Registration Office)で外国人登録することが義務づけられていて、移動の際も警察官の同行が必要です。
チトラールに到着したらまずはFROのある警察署へ!
イスラマバード、ラワルピンディーから
イスラマバードはカラチカンパニーのバススタンドから、
ラワルピンディーはピールワダイのバススタンドから、
マルダーン、ディール、ロワリトンネル経由でチトラール行きのダイレクトバスがあります。
- 複数のバス会社から1日数本ずつ(大体朝出発)
- 料 金:1,200〜2,000Rs(2019年1月現在)
- 所要時間:12〜14時間
様々な会社があり、大型バスもあればミニバス、ハイエースもあります。
メジャーどころは以下の通り。
以下の会社は中型〜大型のバスでの運行です。ハイエースにギューギュー詰めではありません。
大体の場合、朝早い時間の出発になります。
出発曜日や時間は会社によって異なるのと、その時折々で変更しますので、予約の際に確認を。
【ラワルピンディー〜チトラル】
- Pakiza Travel Service
ADD:Pirwadhai Rd, Pirwadhai, Rawalpindi, Punjab
PHONE:+92-51 5163459 +92-333 5474043 +92-333 5291838
【イスラマバード〜チトラル】
- MARVI Travel & TOURS
ADD:Farhan plaza, 3rd floor, G-11 Markaz, Islamabad
PHONE:+92-518 469096 - Hindukush express
PHONE:+92-943 413151 +92-943 413152
※HINDUKUSH HEIGHTS HOTELのオーナーによる提供サービス
ペシャーワルからもマルダーン、ディール、ロワリトンネル経由となります。
ギルギットから
ギルギットからはシャンドゥール峠経由でチトラールへ向かうこともできます。
標高3,700mの峠を越すため、高山病にも注意。
途中のマスツージで1泊する必要があります。
冬の間は積雪のため、通行できません。
ギルギット〜マスツージ
- NATCOのバス1日1本
- 料 金:1,000Rs(2019年1月現在)
- 所要時間:13〜15時間
マスツージ〜チトラール
- 乗り合いジープ
- 料 金:300〜400Rs(2019年1月現在)
- 所要時間:5〜6時間
NATCO(Gilgit City Booking Office)
ADD:NLI Market, Airport Rd, Dumial, Gilgit, Gilgit-Baltistan
PHONE:+92 58119 20435
シャンドール峠を越えるこのルートは、イスラマバードからフンザを目指して北上するカラコルムハイウェイ同様、バックパッカーに有名なルートです。
風光明媚なスポットも多いので、お金に余裕がある場合は、車やジープをチャーターしてゆっくり巡るのもおすすめです。
昔は、このルートを馬を買って通るのがちょこっとだけ流行っていました。
テレビで紹介されていたカラーシャの谷のハテナ?
私が実際に見たわけではなく、友人が教えてくれた内容ですが…
ちょっとそれおかしくない?的な情報の紹介があったようなので、補足しておきます。
護衛をつけるのは特別なことではない
テレビ番組では、カラーシャ族の住むカラシュバレーを、警察の護衛が必要な特別な秘境・危険な場所のように紹介していたようですが、
パキスタンには、外国人は警察の護衛をつけないと立ち入れないエリアは複数あり、カラシュバレーだけが特別ではありません。
カラシュバレーはその美しい景色や民族衣装、独自の文化が注目されていて、外国からの観光客も多いです。
最近は中国人や東南アジア人のグループ客も訪れています。
カラーシャの女性は優遇されている?
また、番組内で、カラーシャの女性は生理の時に綺麗な建物で休ませてもらえるというな紹介の仕方をしていたようですが…
現在のカラーシャの人々がどういう考えを持っているかはわかりませんが、
生理の時に女性が家ではなく特別な場所で過ごすのは、元々「生理中や出産は不浄である」という考えから隔離されていました。
隔離される小屋はバシャリといいます。
決して「体を休めてね!」という意味の隔離ではなかったはず。
女性は生理中が訪れるとこのバシャリで生活することになり、その穢れゆえ、他人に触れることができなくなります。
手渡しなども禁忌で、食事の受け渡しなども、投げたり下に置いたりして渡します。
出産をした場合は、清めの儀式を行った後にゆやく家に帰ることができるようになります。
バシャリは「不浄な状態にある女達が集まる不浄な場所」と考えられていたため、もともとは村のはずれにある電気も通していないような小さな小屋が使われていました。
カラシュバレーでには、数十年前にカラーシャの男性と結婚した日本人・和田晶子さんという方がいて、その方の働きや海外からの援助などもあって今のような綺麗な建物が完成しました。
生理、出産は薄暗い小屋で?少数民族のタブーに挑み、女性の生きづらさ変えた日本人
和田晶子さんはカラーシュバレーでの結婚や生活、支援活動について書かれた本も出しているので、興味がある方は読んでみるといいと思います。
写真家である和田晶子さんがパキスタンで出版された、カラシュバレーの写真集もありますよ!
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浄・不浄の概念があり、女性の出産・生理を不浄と考える文化は世界中いろんな宗教・民族にありますが(元々は日本にも)、
パキスタンのカラーシャ族もそういう概念をとても意識している民族だよということで、
カラーシャ族が特別に女性を卑下しているというわけではないのでは、と私は思っています。
なんでテレビで「女性が体を休めるための場所」というような報道をしたのか非常に謎です。 ガイドが間違えて伝えたのかな?
あとテレビって、やっぱり結構話を盛ってるんですね…他にも色々…
カラーシャ族はその人々も、彼らが住む谷もとってもフォトジェニックで美しい場所です。
テレビを見て興味を見た方は、ぜひ訪れてみるといいのではないかと思います。
ホテルとかも整備されて、昔よりずいぶん滞在しやすくなってるはずです。
カラシュバレーからフンザへも行きたい!って方はこちらの記事を参考に。
チトラールからギルギットに戻ればフンザはすぐです。
追記:チトラール〜カラシュバレーをつなぐ道
ここからは2022年になってからの追記です。
2022年3月、チトラールとカラシュバレーを結ぶ、46kmの道路の道路の建設がスタートしました!
工事に関連し、2000人の新規雇用も見込まれていること、
アクセスが向上する事が今後の観光業の発展の後押しとなるということで、地元の人々は道路の建設を喜んでいるとの事。
もちろん、生活に必要な物資も入ってきやすくなるし、
カラシュバレーの人も今より気軽に街まで出て行く事が出来るようになり、
生活がしやすくなるのは、とっても喜ばしい事でしょう。
パッと聞くと素晴らしい事ではあるのですが、
観光業の発展とともに出てくる問題に対しても、ちゃんと考えられているのだろうか?と言うのを、私はちょっと気にしています。
観光発展とカラーシャ独自の文化の保存の両立
前述している通り、カラッシュバレーに住む人々は、ムスリムではなく、独自の宗教・文化を持っています。
今も多くの観光客がここを訪れ、カラーシャの人々の生活や、様々なお祭りを見学して行きます。
観光客が増えてくる中で出てくる問題が、いわゆる観光公害。
これまでも、カラシュバレーを訪れる観光客(残念ですが、主にパキスタン人男性観光客)による、こんな被害が出ているという話を聞きました。
- 地元の女性を不快にさせるレベルで無作法にカメラを向ける
- 地元の女性に夜の相手をさせる事を求める
- 地元の文化を悪用して、カラーシャの男性と「兄弟の契り」のようなものを結び、そこで採れる果実や作られる葡萄酒、酷い場合は土地の権利を搾取する
- ゴミのポイ捨て、環境破壊
- イスラームやイスラーム関連文化の押しつけ(学校の先生が子供達に、髪をショールで覆うよう教えるなど)と、それによるカラーシャの文化の消失
カラシュバレーで起きている観光公害は、ニュースにもなっています。
これらはパキスタンやカラシュバレーだけでなく、全ての国・全ての観光地で起こりうる事ですね。
以前も紹介した事がありますが、例えばフンザでも同様の問題が出ており、
今は結局はフンザ独自の文化や環境保存に関しては何となく有耶無耶になりつつ、
「観光開発推進」の方向に舵は向いているなと感じます。
カラシュバレーはフンザよりもさらに、パキスタンやイスラムから独立した独自の文化をもつ人々が住む場所。
そこに住む人々が納得して、自分たちの文化を手放していくのであれば、
それは仕方がない事なのだろうと思うのですが、
もし「カラーシャ独自の宗教・文化」を見学にくる旅行者が増えたことがきっかけとなり、
肝心のそれが失われていってしまうことになっていくとしたら
この観光開発は、本末転倒だなぁと思うのです。
カラーシャの人々の文化を守り、そこに住む人々の意思を尊重しながら、
上手く観光開発が進んでいけば良いな、と思うのですが、
パキスタン政府がそこまで考えているだろうかと、少々不安が残ります。
道路の建設はもう決まってしまった事で、
カラシュバレーがどんどん変わっていく事も、おそらくもう避けられない事ではあるのでしょうが、
カラーシャの人々が一方的に不利益を被ったり、彼らの意志を無視した開発が進む事がないように、と願っています。
お読みいただきありがとうございました!
コメント欄はちょっと下にあります。承認式ですが、コメントはお気軽にどうぞ。
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治安、旅行ガイド、両替やATM、フンザへの行き方など、ブログ内のパキスタン旅行や滞在に関する必要情報・便利情報をまとめた目次(サイトマップ)です。
デザイナーとライターをしています。お仕事のご依頼やご相談もお気軽に。
パキスタン人の作ったフンザの動画を見たけど車やバイクすごいねー。驚いたよ。カラーシュ谷もかわったろうね。なんでも少しずつかわっていくんだね。
ひろさん
すごかろう。アリアバードのガソリンスタンドにもんのすごい行列。
今はフンザでも女の人が車を運転したりしているよ。
はじめまして、こんにちは。
チトラールへのアクセス方法参考になります。
出発時間や運行している曜日、詳細な乗車場所について、またどのバス会社が大型なのか、小型なのか、ハイエースなのかお分かりであれば記載頂けるとありがたいです。
556shotさん
コメントありがとうございます。
掲載した3つの会社は全て中型〜大型バスでの運行です。
ハイエースにギューギューではありません。
発着は記載した通り、
イスラマバードはカラチカンパニーのバススタンドから、
ラワルピンディーはピールワダイのバススタンドから。
運行は週3〜4便程度で、大体朝早い時間に出発です。
その時々で出発曜日や時間などは変わりますし、なんにせよ事前予約された方が良いかと思いますので、
詳細なお時間などは各バス会社にお問い合わせ下さい。