こんにちは、スズケーです。
9年前から預言者ムハンマドに対する冒涜罪に問われていた
キリスト教徒のアーシア・ビビに、最高裁による逆転無罪判決が下されたパキスタン。
これがきっかけとなり、
この結果が気に入らない人々によってパキスタン国内のあちこちで抗議運動が起き、
道が封鎖されたり、インターネットや携帯電話が普通になったり、
挙げ句の果てには無関係の人や車が襲われると言う暴動が、数日間続きました。
事件の詳細についてはこちらのブログに記載しています。
実際に数日前に起きていたことで、
暴徒化したパキスタン人が無差別に車を襲っている動画もかなーり目にしました。
「teri maa!(motherfucker的)」って叫びながら、
バスやトラック、車を金属の棒で殴りまくり、火をつける。
裁判とか関係なしに、大義もなくただ暴れてるだけだよね!?
ただのバカだよねアンタらっ!!!
としか言い様がない。
私には、キリスト教徒のパキスタン人の友人もいるので、
彼が今どうしているのか、とても気になっています。
パキスタンの宗教差別
残念ながら、現在のパキスタンにはイスラム教を優位とする宗教的不平等、宗教的迫害が存在します。
そもそもパキスタンはイギリス領だったインドが独立する際に、ムスリムのための国家をと言って建国された国なので、
政治にもイスラーム色が強く出るのは当然の事かもしれませんが…
イスラム教は国家の宗教であると憲法に定められています。
こないだのイムラン・カーンの声明でも、
パキスタンはイスラームの名の下に建国された国であると強調していましたね。
また、大統領や首相はイスラム教徒でなくてはならないとも規定されています。
しかし、憲法には「すべての国民に法の前での身分と権利と安全の平等を保証する」という条文もあり、大統領にはムスリムしかなれない事は、大きく矛盾していると思います。
元々のパキスタン憲法ではイギリス的な法体系を主としていた事もあり、ムスリムと非ムスリムとの間に区別を設けていなかったそうですが、
1978年からのムハンマド・ジア=ウル=ハク大統領によるシャリーア(イスラム法)体系を導入した法改正で、法のイスラム化が進められました。
法のイスラム化に関しては国民投票が実施され、その導入の賛否が問われましたが、95%以上の支持を得る結果となりました。
また、他宗教に対する差別や迫害だけでなく、
イスラム教スンニ派によるシーア派のテロや攻撃が起きるなど、同じイスラム教内でも宗教的少数派に対する差別があります。
憲法に「国民は誰でも自分の宗教を信仰し実践し広める権利を持つ」と定められているにも関わらずです。
比較的自由主義で進歩的な考え方を持っていたパルヴェーズ・ムシャラフ大統領の政権の際に、ムスリムと非ムスリムの宗教・宗派間にある宗教的不寛容を減らすための改革が取り組まれていましたが、
今回の騒動をとってみても、その成果が出ているとは言えず、
今もパキスタンにおけるイスラームの多元性・寛容性は失われています。
パキスタンのキリスト教に関するニュース
国民の大多数がムスリム(イスラム教徒)のパキスタンでは、
少数派であるキリスト教徒に対する暴力事件は今回に限った事ではなく、
過去にもたびたび起きています。
希望通りにいかない仕事、良くならない生活、腐敗した政治。
そういったものに対する不満の”ガス抜き”のために、
マイノリティにあたり、攻撃する事件が定期的に起きるのか…と私は思っています。
あたられる方はたまったもんではないですが。
CHRISTIAN TODAYというキリスト教系のメディアでは、
パキスタン国内で起きたキリスト教に関するニュースを紹介しています。
イスラム教徒とキリスト教徒が共存する村
もちろん、パキスタンのムスリムの全てがキリスト教徒に敵意を持っていたり差別しているわけではなく、宗教の垣根無く、お互い理解・尊重しあって生活している人たちもいます。
先ほど紹介したCHRISTIAN TODAYでも紹介されているニュースも、全てがイスラム教徒にとって不幸な暗いニュースというわけではありません。
紹介されているニュースの一つに、ムスリムがキリスト教徒とともに教会の再建を行っている、というのがあります。
ゴジュラはキリスト教徒居住地の近くにある。2009年、1人のイスラム教徒の暴徒による襲撃事件が起きた。キリスト教徒の1家族7人はじめ10人が殺され、数十の家々や四つの教会が放火された。
この記憶を癒やす異教徒間の協力が始まっている。異教徒同士の対立があまりにも頻繁に起こる国家で、イスラム教徒とキリスト教徒が一緒になってキリスト教会の会堂を建築しているのだ。
カトリックの祈祷室もイスラム教徒たちの援助で、2005年に建設された。別のイスラム教徒は、「私たちのモスクは昔からここにありますが、キリスト教徒たちもまた自分たちの教会で礼拝する権利があるはずです」とパキスタン・デイリーの記者に語った。
その村には教会が破壊されて以来、キリスト教徒が礼拝する場所がなかった。居住しているのはほとんどがイスラム教徒たちだが、そこには八つのキリスト教会が存在している。
キリスト教徒の村人、ファリアル・マシさんは、「私の知る限り、私たちはずっと一緒に暮らしてきました。お互いの幸せや悲しみを共有し、イスラム教のお祭りにも参加します。苦しいときは、イスラムの人たちも私たちの隣人として傍らにいてくれると確信しています」と話した。
2009年に一部の暴徒による、教会やキリスト教徒への襲撃・殺人事件が起きた
パンジャーブ州にあるゴジュラという町の近くのカルサバード村のニュースです。
この村では、異なる宗教の信者たちが平和的な共存を目指していて、
パキスタン国内の他の多くの地域と違って、
キリスト教徒の居住区が隔離されておらず、イスラム教徒と隣同士なのが当たり前なのだそうです。
村人はもちろん、ゴジュラで起きた事件を知っていますが、
これ以上の対立や悲劇の連鎖が起きないよう、共同体としての連帯を見せたいという志を持ったムスリム・クリスチャン双方の人々によって、
自然災害によって失われた教会の建設が行われています。
彼らの行為は、ムスリムとクリスチャンと言う、異教徒間の調和を打ち立てようとするものであり、
それがこの村で実現できればパキスタン全土で実現できるのではないか、という
希望を持って行われています。
パキスタンの宗教マイノリティと言うと、一方的に差別・迫害されているだけのような印象がありますが、
この村のように、うまく共存できている場所もあるんですね。
この村の人たちは、ムスリムとクリスチャンも、今回の抗議活動や暴動について
胸を痛めているのだろうと思います。
こういった平和な村に、外の暴動が飛び火しないといいのですが。
パキスタン人クリスチャンの友人
最初に述べたように、私にはパキスタン人クリスチャンの友人がいます。
といっても、今は連絡が取れなくなってしまっているのですが。
彼は私が昔、ラワルピンディー滞在時にいつも宿泊していた安ホテルのスタッフで、
控えめだけどよく気がついて、
私や他の日本人旅行者の事にもとても親切にしてくれる人でした。
そこのホテルはフンザの人が経営をしていたのだけれど、
スタッフはフンザ人が多いとはいえ、パンジャーブ人、パシュトゥーン人もいて、
彼のように宗教的マイノリティでも気にせず、みんな一緒に働いていました。
安くて立地が便利だった事もありますが、
私はそういう、出身地や民族や宗教で人を判断しないオーナやそこのスタッフ達の人柄が好きで、
いつもそこに泊まっていました。
友人がキリスト教徒である事も、1年くらいは知りませんでした。
このホテルでは誰もそんなことを言わないし、気にしなかったので。
彼がキリスト教徒である事を知ったあとも、私も別に何も変わらなかったし、
これまで通り、他の日本人旅行者と一緒に、
彼の空き時間にみんなで一緒にお茶やジュース飲んだり、お菓子をつまんだりしながら
日常のどうでもいいような話をして過ごしていました。
今はそのホテルはなくなってしまって、
スタッフ達もみんなあちこち散り散りになってしまい、
「そこに行けばいつもいる」と思っていた人たちと連絡が取れなくなりました。
クリスチャンの彼もその一人。
ただ、オーナーとは今も連絡をとっているので、
今度、クリスチャンの彼を初めとする他のスタッフ達が今どこにいるか
聞いてみようかと思います。
願わくば、みんなが、
あのホテルで、民族も宗教もなんにも関係なく仲良く過ごしていたように、
今の自分の場所でも幸せにしていますように。
パキスタンの人々の頭が、もうちょっと開けて、
自分と違う人・ものを受け入れることができるだけの寛容さを持てるようになるといいなぁと思います。
いい人だって多い国なんだから、
こういう騒ぎのたびに、国やイスラームの評判落とすの、良くないよ。
私はパキスタンが好きだから、より一層残念に思う。
ちなみに私は、ムスリムのパキスタン人と結婚してますが、
私自身はイスラームに入信してません。
それでも別に問題ないし、お互いのことを尊重しあいながら仲良くやれてますよ。
くわしくはこちらで。
お読みいただきありがとうございました!
コメント欄はちょっと下にあります。承認式ですが、コメントはお気軽にどうぞ。
パキスタン、フンザ旅行に関する情報記事の一覧はこちらから!
治安、旅行ガイド、両替やATM、フンザへの行き方など、ブログ内のパキスタン旅行や滞在に関する必要情報・便利情報をまとめた目次(サイトマップ)です。
デザイナーとライターをしています。お仕事のご依頼やご相談もお気軽に。